<事例1>トラスト・ミー

<事例>朝日新聞2018/11/19

鳩山由紀夫首相はオバマ氏との会談について「こういう(米軍普天間飛行場の県外移設を求める)感情が沖縄にも強くある。そのなかで、我々としてはできるだけ早く結論を出したい。だから『トラスト・ミー(私を信頼してほしい)』だと。そうしたら『信じますよ』と言ってくれた。そういう信頼関係はあると思う。(どこに移設するかという)中身の話ではない」と説明した。

鳩山氏は「トラスト・ミー」という言葉で、オバマ大統領に鳩山氏を「信頼」することを要請しましたが、「信頼」は根拠にはなりません。オバマ大統領は『信じますよ』という生返事をしただけで、実際には鳩山氏を「信頼」せずに見捨てました。その後の事態の推移から考えれば、オバマ大統領の判断は適正であったと言えます。

なお、この発言の5年後に、鳩山氏は「大統領が好きだというパンケーキを出して『食べろ』と言ったら、『おなかいっぱいだ』と食べてくれなかった。そのとき『トラスト・ミー』といった」と説明。さらに同席した官僚が誤って情報を伝えたと主張し、「普天間の移設先を辺野古にするから『トラスト・ミー』と言ったつもりは全然ない。勘違いなのに批判され、怖いなと思った(Sankei biz)」とラジオで語りました。

鳩山氏の説明は支離滅裂であり、「信頼」するかしないかは個人の自由ですが、「信用」するのは困難と言えます。

<事例2>辻元清美氏への選挙応援

<事例2>デイリースポーツ 2017/10/14

■蓮舫氏,辻元清美氏と友情タッグ「信頼できる人だけを応援」

民進党の蓮舫前代表(49)が13日、同党を離党し立憲民主党に加わった辻元清美氏(57)と大阪府内で演説を行った。辻元氏の街頭演説に応援に駆けつけた蓮舫氏は、辻元氏に走り寄って抱き合い、腕を組み、友情をアピールした。

安倍政権を批判した蓮舫氏は「この選挙戦に突入し、信頼できるのは誰かということも見えた。蓮舫は信頼できる人だけを応援する。その代表が辻元清美さんです。国会で自分の持論を曲げることなく戦ってきた仲間です」と声を張りあげた。

蓮舫氏は「信頼」を根拠に辻元氏の選挙応援を行いました。「信頼」は主観であり、客観的根拠が必要な「信用」とは異なります。このように「信頼」という言葉は「信頼できる」と宣言するだけで有効になる便利なマジカル・ワードです。蓮舫氏が信頼できるからといって、有権者も信頼できるとは限らないことに注意が必要です。

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