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以下記事に書いたように、

東京の明治神宮外苑再開発問題について書いた記事がめちゃバズってTBSの討論番組にも呼ばれたりしたので、日本各地の「再開発」について「アレはどう思う?」ってX(ツイッター)って知らない人に聞かれることが増えたんですよね。

なかでも、「大阪市立大阪北小学校跡地」に住友不動産が建てたタワーマンションは「最悪of最悪」の再開発だろう、という話がSNSで盛り上がっていて、興味を持ったので正月の帰省に合わせて現地を見に行ってきました。

今回記事は、この「梅田の住友不動産のタワマン」の話を皮切りに、よく話題になる明治神宮外苑や下北沢といった色んな事例を取り上げながら今の日本における「再開発」がどうあるべきか、について考える記事になります。

1. 大阪梅田の「住友不動産のタワマン」について

SNSでたまに、「街づくりのセンス」は、

森ビル>>三井不動産>>>三菱地所>>>>>(超えられない壁)>>>>>>住友不動産

…みたいなレベルの違いがあるっていうコメントを見るんですが(笑)

確かに大阪梅田の住友不動産のタワーマンションは本当にもうあらゆる土地的な連続性を破壊して「ドカーン」と高層ビルを建てていて、義務付けられてるフリースペースも以下のように無骨なカラーコーンが置かれていて…

「街の賑わいを意図した再開発」みたいな視点では「零点」というか「最悪of最悪」の再開発だと言われてるのもわからんでもない(笑)

なにしろ、ここには廃校になった小学校跡地があって、それを市民がある程度自由に使える環境になっていたのを、「賑わいをもたらす施設も作りますから」という提案で住友不動産がおさえた場所らしいんですよね。

それでもってこんな「高級ホテルと分譲マンションと高級賃貸マンション」に完全特化しちゃって一階部分の店舗と広場はめっちゃオザナリなビルを建てたら、そりゃ「おまえなー(怒)!」という反応になるのも凄いわかる。

SNSの評判を見ていると、「住友不動産のマンションの大ファンだし住んでる」みたいな人でも、「あいつらに街づくりは任せたらイカン」って言ってたりして面白いです。

特に秋葉原に建てた高層ビルとかが、「回遊性とか積み重なった文化とかまるで無視して建てやがった」みたいに評判が悪いのをよく見かけます。(秋葉原の土地勘がないので私はちょっと保留ですが)

ただ、私のクライアントの小売店がこの近くにあるんですが、「あのマンションの評判地元じゃ最悪らしいじゃないですか」って聞いたら、

「いやそういうわけでもないんですよ。小学校跡地に作るから計画段階で最初に期待値を上げまくったから落差で叩かれているだけで、ゴチャゴチャの商店街と巨大ビルが無造作に隣接してるのはあの辺らしくて”そういうもんかな”という受け止め方もあります」

…みたいな事を言っていて、なるほどそういう意見もあるのか、と思いました。

土地勘のない人には場所がよくわからないと思いますが、現地は「お初天神」という古い小さな神社の近くにあるめちゃゴチャゴチャした商店街の一角で、そこが突然何の土地利用計画性も感じられない唐突さでバカーンと切り開かれて近未来ビルが建ってるというのは、最大限ポジティブに言うと「アジア的カオス」のパワーを感じるという見方もできます。

そういう「メチャクチャしよるな〜」というカオス感でいうと、特に私は一時期まさにこの近くで深夜の街に立つ仕事をしてたんで、妙に懐かしかったです。

私は大卒で外資コンサルのマッキンゼーからキャリアを始めて、その後「グローバルな発想」と「日本社会のリアル」をちゃんと繋ぐ役割の人が必要になるとか青臭いビジョンで一時期ブラック営業会社で働いてみたり肉体労働してみたりホストクラブで働いてみたりカルト宗教団体に潜入してみたりしたことがあるんですね。(なんでそんなことを?と思った方はよければこちらのインタビューでも読んでください)

で、短期間ですけどホストクラブで働いてた時に(その外見で!ってよく言われるけど20年前の若い頃の話ですからね)夜の街で勧誘とかしてたのが「まさにこういうエリア」で、早朝まで徘徊する謎の家出少女たちとホームレスと大量のネズミが走り回る夜の梅田駅東側のゾーンは今回久々に行ってみて色々と考えさせられるところがありました。

「このマンションの是非」はもう建ってしまったんだから論じても虚しいとは思いますが、今後も日本中で行われ続ける再開発が、少しでも「良い」ものになっていくにはどういう論点を考えるべきなのでしょうか?

2. 「カオスな”悪所”の魅力」と「再開発」をいかに両立できるかについて真剣に考えるべき

上記で「現地の雰囲気」について語って私が何を言いたいのかというと、その「カオスな”悪所”の魅力」みたいなものをどう扱うか、という点が、「日本の再開発」において最も重要な課題なんだという話がしたいんですね。

ちなみにたまに日本語読めない人いるんで一応言っておきますけど「悪所」っていうのはポジティブな意味で使ってるワードですからね!

結局、新宿ゴールデン街とか博多の屋台とかガイジンさんでも大好きな人いますし、「商店街」に対する日本人の絶大なノスタルジー的賛同の気持ちなども含めて、「ゴチャゴチャした悪所感(でも治安はまあまあいい)」っていうのが日本の魅力のある大事な一側面だってことは明らかにあるんだと思うんですよ。

で、こういう時に日本で「再開発議論」が揉める原因は、

物凄くガチャガチャした古いカオスなエリアの持っている価値
vs
先進国の大都市にあるべきキレイで現代的なビルが持っている価値

…があまりにも対立してしまっていて、「両立させる術」がなかなかアイデアとして共有されてない側面にあるんだと思うんですよ。

特に「アジアの都市のカオスな魅力」=「悪所感」みたいなのが日本の都市の魅力として一部にあるのは全くその通りなんですが、そういうのをそのまま地震大国日本で残し続けるわけにもいかないよねという大問題にぶつかってしまう。

「明らかに最新の耐震基準を満たしていない建物だらけだし、いざ出火したら消防車も入りづらい路地だし」

こういうの↑をほっとくわけにはいかないよねってなった時に、「じゃあ再開発しなきゃ」となるんですが、その「再開発」と「カオスな悪所感の維持」っていうのが、現状両立する方法がなかなか見えてこないんですよね。

だから、

・「カオスな魅力」を重視する人たちは徹底的にノスタルジーにこだわって「そのまま残せ」の一点張りを主張し続ける

・しかし耐震性その他で「そのまま残す」ってわけにもいかないので強引な再開発が進む

・「再開発推進者」の中に「カオスな魅力」を大事に思ってる人が少ないので、物凄く大味で強引なインテリジェントビルが建ってしまう

こういう感じになってるのが「今の日本の再開発の問題点」なのだと思います。

どうすれば「カオスな悪所の魅力」と「再開発」は両立するのでしょうか。