共産党が「株高」を歓迎しない理由

その理由は下記の点にあると考えられる。

党規約2条でマルクス・レーニン主義(科学的社会主義)を理論的基礎とする日本共産党は、「生産手段の社会化」による社会主義・共産主義社会の実現を目指す政党であるから(党綱領五)、国有国営企業を中心とする「計画経済」が原則であり、私企業である株式会社の存立と経営に不可欠な「株式市場」の存在にはもともと否定的である。 「株高」でもっぱら利益を得るのは株式を大量保有する大企業・資産家・富裕層すなわち資本家であり、労働者は利益を得ていない。 その上、株式譲渡益や配当に対する分離課税は20パーセントと低く税制上も資本家は不当な利益を得ている。
「株高」は資本家と労働者の貧富の格差をますます拡大し、労働者にとっては全くメリットがない。
「株高」を評価すると自民党政権の経済財政金融政策の正当性を認めることになる。
「株高」のメリット

しかし、「株高」には下記のメリットがある。

「株高」は企業などの資本家の利益だけではなく労働者の利益にもなる。「株高」により株式を保有する企業や株式を発行する企業の業績が向上すれば従業員である労働者の賃金上昇など待遇改善にもプラスとなる。 「株高」は国家財政にもプラスである。「株高」で利益を得た企業や富裕層など資本家の納税により税収が拡大すれば社会保障の財源にもなり労働者にとってもプラスとなる。 「株高」は日本経済全体にとってプラスである。「株高」で株式保有企業や株式発行企業の業績が向上すれば、設備投資が増え、賃金上昇にもプラスであり、日本経済全体の景気が拡大する。これは労働者を含む国民生活にとってプラスである。 「株高」は外国資金・外国資本の日本への流入を促し日本経済の規模が拡大するから、日本の「国内総生産(GDP)」を押し上げる。 共産党への批判 前記共産党機関紙「赤旗」の「株高批判」の論調によれば、現在の「株高」は国民生活の実態を全く反映していないから、適正な株価ではない。国民生活の実態を反映した適正な株価はもっと低くなければならない、ということになる。すなわち、共産党は現在の「株高」を歓迎しないのみならず、適正な株価への下落を望んでいることになる。これは共産党が「株高」の上記メリットを全く認めないからである。 共産党は「株高」は資本家の利益であり、労働者の利益ではないとの立場であるが、日本の個人投資家は2700万人(野村アセットマネジメント株式会社2020年調査)にも達しており、多くの労働者も個人投資家として株式投資をしているのであり、「株高」の恩恵を受けているのが実態である。共産党はこの面を全く無視している。 共産党は現在の「株高」は国民生活の実態を反映していないと主張するが、これは株価が半年先1年先の企業業績や日本経済の状態を予測した「先行指標」でもあることを全く無視するものである。 共産党が理論的基礎とするマルクス・レーニン主義(科学的社会主義)は「窮乏化革命論」である。これは、労働者が豊かになればなるほど社会主義革命は起こらず、貧しくなればなるほど社会主義革命が起こるという理論である。そうすると、「株高」によって経済が成長発展し労働者が豊かになればなるほど社会主義革命は困難になる。「株高」は社会主義革命の障害になるから、共産党にとっては歓迎できないのは当然であり、社会主義革命にとっては「株安」のほうが好都合なのである。 なお、日本とは正反対に社会主義中国の株式市場は大幅に下落している。このため中国共産党政府は最近株価対策として「空売り」制限措置をとった。このように中国共産党も、「株高」は中国経済にメリットがあり、「株安」はデメリットであることを熟知していることは明らかである。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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