石破茂です。
安倍派の閣僚、党役員が辞任し、後任人事として政調会長に昭和61年同期当選の渡海紀三朗代議士(元文部科学大臣)が就任致しました。近年でも特筆すべき良い人事だと思います。
渡海議員は真摯で誠実、正義感の強い方で、お互いに若い頃は政治改革に奔走したものでした。私が総裁選挙に立った時は、厳しい状況にも関わらず、損得勘定抜きに推薦人となって全面的に支援してくださいました。長年の友情に報いる意味でも、出来る限りサポートしたいと思っています。
衆議院国対委員長に浜田靖一前防衛大臣が就くのも、同様に大変良い人事と思っております。小泉内閣の防衛庁長官と副長官、安倍総裁の下での幹事長と幹事長代理と、共に仕事をしてきましたが、見識、胆力ともにとても素晴らしい方で、来年の通常国会を乗り切る意味でも最適任です。
平成元年5月23日に党議決定した「政治改革大綱」冒頭の「現状認識」は、
「リクルート疑惑をきっかけに国民の政治に対する不信感は頂点に達し、我が国議会政治史上、例を見ない深刻な事態を迎えている。特に厳しい批判が我が党に集中している」
「今こそ事態を深刻かつ率直に認識し、国民感覚とのずれを深く反省し、『政治は国民のもの』との立党の原点に返り、党の再生を成し遂げなくてはならない」
「国民の政治に対する信頼を回復するためには、今こそ自らの出血と儀性を覚悟して、国民に政治家の良心と責任感を示す時である」
と記します。残念ながら、この「リクルート疑惑」を「パーティ券疑惑」に置き換えれば、今でもこのまま通用するものです。
この文章に示された悲壮な思いを、今の我々はどれほど持っているでしょうか。私自身、長くこの文章を読み返すこともなく、ここに記されたことの多くを実践もせずに今日に至ってしまったことを深く反省するばかりです。自民党はこの政治改革大綱の精神に立ち返るべく、所属全国会議員がこれを読み、拳拳服膺することから始める必要があるのではないでしょうか。
当時の我々若手議員の精神的支柱であり、これを起草された伊東正義先生も後藤田正晴先生も亡くなられて久しいのですが、歴史と伝統のある我が党だからこそ先人の思いを受け継ぐことが出来るのであり、これが野党にはない財産です。
若手のみならず多くの自民党議員が選挙区で批判され、厳しい立場に置かれています。ここ数日、地方の自民党関係者から電話やメールを頂戴するのですが、離党する党員が増えているとのことです。総裁の「火の玉」発言を受けて、党が何かしなければ、批判が収まることはなく、支持率が更に低下することが懸念されます。
今年で没後30年となる田中角栄先生は「あの戦争に行ったヤツがこの世の中の中心に居る間は日本は大丈夫だが、そうでなくなった時が怖い。だからよく勉強してもらわねばならない」と仰っておられましたが、歴史の教訓を伝承することの重要性は今回の事態においても同様です。