おそらく、重症者をできる限り見逃さ(聞き逃がし?)ないように、初めは基準値を下げて医療機関受診を勧めるようにする。そうすると、ボーダーラインの情報を含めて幅広い形で情報収集が可能となり、人工知能はさらに学習して、より精度(正確さ)を高めていくことが可能となる。

人間の診断基準に幅があれば、人工知能もそれらの基準に基づいて学習するので100%精度に至ることはない。いろいろな種類の人工知能が開発されているが、その優劣は集められた(集めれれる)情報の質の高さに左右される。一つの医療機関やその数少ない共同研究者がデータを集めても、世界で競う情報量にはならない。

国家戦略として医療の膨大なデータを収集することやそれを上手に利用することに1兆円くらいかけても、医療の質の向上、医療のDX化、医療の個別化ができれば、毎年数兆円の医療費削減につながるはずだか、いつまでたっても、「遅れた情報で、間違った方向に、そして、できそうもない予算をつけて」すべて水泡に化す。失われた30年、この繰り返しが続いている。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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