次に、「人のために尽す徳業がない」。何時の世にでも社会的課題は山積しています。徳業とは、その克服の一助となる事業を世の為人の為やって行くことです。そういう意味から言うと、徳業など山程あります。にも拘わらず「人のために尽す徳業がない」のは、自分の徳が十分ではないからでしょう。「徳は事業の基(もとい)なり。未だ基固からずして棟宇(とうう)の堅久なる者有らず」(『菜根譚』)――事業を発展させる基礎は徳であり、此の基礎が不安定では建物が堅固ではあり得ません。事業とは真に徳業でなければ、長期的には存続し得ないのです。
経営者は世の為人の為という志を抱き、世の為人の為になる製品やサービスの提供あるいは利便性の向上等に、真摯に取り組まねばなりません。「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」(『論語』)と言いますが、徳無き事業「利業」だけで行くと、その弊害は必ず出てき、会社は必ずおかしくなります。私自身は、「公益は私益に通ず」と信じています。つまり、世の為人の為になる活動をして行けば、軈(やが)て自らの利益にも繋がるということです。ですから、SBIグループ創業以来、徳業を目指してきました。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2024年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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