“高齢者をターゲットにすれば上手くいく”時期は長く続かない
上記のように、「銀行は個人顧客から相手にされにくくなっているのだから、ゼロ金利が解除されたとしてもリテール部門の収益は伸び悩むはずだ」という筆者の考えに対して、「いやいや、確かに若い世代はネットで情報収集していて“銀行離れ”しているかもしれないけれど、高齢者世代はまだ銀行への信頼感が残っているはずだ」という反論があるかもしれません。
確かに、スマホの所有率が半分をきる70代(総務省の『令和3年版 情報通信白書』によると所有率40.8%)以降の世代であれば、銀行に関する悪い情報や、銀行よりも有利な運用手段に関する情報にアクセスできている層が少ないこともあります。
したがって、昭和的な「銀行への信頼」がある程度残っている可能性があります。
ただし、高齢者の間でも、スマホの所有率は年々上昇しており、今後5〜10年のスパンで、高齢者の間でも「単に子や孫と通話する手段として携帯を所有する」のではなく、「情報取得の手段としてスマホを活用する」割合が増え、高齢者のリテラシーが若い世代のそれに近づくことは間違いありません。
何が言いたいかというと、銀行側の「高齢者を狙えば預金も獲得できるし、金融商品の販売数も増やせるはずだ」という目論見が通用するのは、向こう5年、長くても10年ほどの期間に限定されるということです。
それ以降は、銀行に対して不信感を持ち、あるいは銀行を介さずに資産運用することを選好する高齢者が多数派となる時期がやってくるのではないでしょうか。
上記のような事情から、ゼロ金利政策が解除されたとしても、記事の中で予測されていたような「リテール部門が出世コースと位置付けられる展開」は訪れないと考えています。
向こう5年の期間だけであれば、リテール部門にリソースを注ぎ、高齢者の中に一定数存在すると見られる「銀行を信頼する層」向けの施策を強化することで、多少の成果をあげられる可能性があります。が、長期的にみればその成果は長続きしないはず。
となると、「リテール部門が銀行の中で“出世の登竜門”と位置付けられる」という展開の実現性は残念ながら低いと言わざるをえません。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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