「セクシー田中さん」の原作者である芦原先生が、自ら命を絶つという大変衝撃的な事件が起きてからしばらくになりますが、日本での議論に関して原作の漫画がどのように改変されたのか、嘘を言っているのは日本テレビなのか、小学館なのか、脚本家なのかということで議論が堂々巡りになっていますね。
この議論に関してはネットでもだいぶ騒がれているのと、現在日本テレビ内で調査が行われており、証拠がない状態で断定的なことを言うことは避けますが、ひとつどうしても議論から外れているなあと思うことが、この事件は、ある意味労働問題であるということです。
2023年12月8日に発売された私の新作書籍『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、日本の労働環境はまだまだ特殊で、労働問題に関しては議論が不十分なところがあります。
芦原先生は漫画の連載を通常通りに続ける中で、ドラマの脚本をチェックし、修正を加え、関係者との議論を行い、さらにドラマの後半部分は、先生自らが脚本をお書きになっていました。
このような作業は仕事している人であればよく分かりますが、膨大な工数がかかり、ドラマの場合は 関係者の数も多いですから、コミュニケーションの負荷も相当だったはずです。
その上で漫画の連載を通常通りやっていたということで、労働負荷が相当重かったはずです。漫画というのは作成に大変な手間暇がかかりますから、その上でドラマの脚本のチェックや作業を行わざる得なかった芦原先生の労働負荷に関して、出版エージェント的な役割を果たしていたはずの小学館は、どのように状況を把握し、作業量の調整を行っていたのかということが疑問となります。
漫画家は自営業者であり、労働の量や負荷に関しては自己責任で管理することになっています。出版社に対しては、漫画家は下請けのような扱いになっています。