さて、そのNHKの様々な問題の一つが視聴料です。国民からの圧力もあり、引き下げも実施しましたが、個人的にはあまり意味のないやり取りだと思っています。NHKが映らないテレビが堂々と売られる時代に於いて視聴者は無限ともいえるほどのメディアの選択肢の中から有料の番組をほぼ強制的に選択させられる理由はほぼほぼないだろうと思うのです。
国営放送が受信料を徴収するのは欧州に多く見られます。アジア諸国は韓国が電気代程度を取りますがそれ以外の国はどの国もほぼ無料、北米もゼロです。また欧州でも受信設備を持っている人だけを徴収するなどそこにはフェアな考え方が踏襲されています。では、NHKがとても立派でお金を払ってもどうしても見たい放送局になればよいという目標を立てるのが良いか、と言われれば否です。理由はNHKは公共というとても面倒な言葉があらゆる自由から手足を縛ってしまっており、面白い番組を作る限界があるのです。
放送番組のバランス、視聴者の年齢層や性別、放送内容の思想的中立性、低廉な製作費、公共故に広告なし…といったフィルターをかけるとどうしても堅苦しくなり、尖った番組は作れず、大河ドラマのような現代とはかけ離れた世界に焦点を当てるか、紅白歌合戦といった老若男女対象のバラエティにするしかないのです。つまり、制作側も大変ですが、見る側も大変なのです。
個人的に思うのはNHKがなぜ、国営放送として政府の補助金で運営できないのか、と思うのです。NHKの収入は年間6890億円(令和4年)です。日本の国家予算を考えると全部をカバーできない金額ではありません。つまりそんなに膨大な金額の話をしているわけではないのです。しかも仮に政府の補助金運営をすればコストが大きく下がるのです。料金徴収のコストが無くなるだけで1割は下げられるでしょう。
また、以前から私がしゅちょう主張するようにNHKは海外向け国家戦略として大事なツールであり、そのせっかくのチャンスを上手に使っていないことはあまりにももったいないことである、と思うのです。例えば今、防衛費の増額が議論されていますが、国家の主張や姿勢、意見を海外向けに述べる一種のプロパガンダは日本の存在感が世界で薄くなるなかで重要な使命であります。ある意味、今、我々は国家戦略のために受信料を払っていると言って過言はないのです。これを言えばいくら何でも国民から同意を得るのは難しいでしょう。
もちろん、少子化の問題もあります。NHKの収入は否が応でも下がり続けるのです。但し、物価は上がり続け、組織は大きくなるとなればつじつまが合わなくなるのは時間の問題です。
抜本的な議論を国民とできるような意識調査と国民投票は必要でしょう。これぞ今の政治がやるべきことなのです。NHK議論のそもそもの入り口が違っているように思えます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月6日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?