NHKの会長に元日銀のホープ、稲葉延雄氏となることが発表されました。6代連続で外部からの登用になるが問題山積のNHKにどう立ち向かうのかその手腕が問われるといったニュースの論調が多いようです。個人的には何も変わらないと思います。過去5代の外部から招へいしたそれなりのキャリアの方々に何が出来たかと言えば何もできず、むしろ、3年間というお勤め期間を無事に終わらせることだけが主眼となっていたように思えます。
思うにどの方も就任時には「どうにか、改革を進める」という意思をお持ちで業務に臨むのだと思いますが、はかない夢に終わるのは改革プランが骨抜きになるような人事構造がそこにあるからだろうとみています。つまり、社内が一種のNHK病でまん延され、独特のプライドの塊が存在する中で、が外部招へいのNHKの会長は期待されても結局、いつの間にか、一流のNHK内部の政治的配慮に長けたバランサーになるのでは、と感じるのです。
NHKの役割をそのウェブサイトから拾うと、「公共放送であるNHKの使命や役割は、視聴者のみなさまからいただいた受信料をもとに、放送の自主自律を貫き、視聴者の判断のよりどころとなる正確な報道や豊かで多彩なコンテンツを全国で受信できるよう放送することで、『健全な民主主義の発達』や『公共の福祉』に寄与することです」とあります。
平たく言えば役人が「わしは国家を背負っている」と意気込むのとほぼ同じで、「俺のこの原稿が世界の隅々に影響を与える」ぐらいの感覚だと思います。
その精神は立派ですが、NHKが生まれたのは1950年。それからメディアの置かれている世界は何次元も変化しています。当然、社会も視聴する人も変わってきています。情報はあふれ、公共放送の情報こそが最も公平で信頼しうるという意味が薄れてきたのはご承知の通りです。そもそもNHKは公平でバランスに長けているのか、という議論も当然あります。
もちろん、NHKに対して一定の敬意もあります。例えば同じニュースをより公平な目で確認したい場合、ご意見百出であることは分かっていますが、それでもまだメディアとしての価値は大いにあります。それは民間メディア、特に民間放送のレベルの低さと表現力の稚拙さと比べると時としてNHKのニューススクリプトは読んでいてほっとすることはあるのです。
NHKは海外向けにも様々な情報を流しており、外国のホテルでNHKが見られるケースもよくありますが、それはNHKの世界への影響力でもあります。民間の放送局はほとんどそれはありません。ということは世界に対する日本のステートメントだともいえるのでしょう。主要民放はニュース番組をユーチューブで流している程度であり、その存在感の違いは雲泥の差であります。