世界的なサルの供給不足の最大の理由は中国がコロナ感染症流行後輸出を止めたことにある。サルに限らず、抗生物質や解熱鎮痛剤も、輸出に頼っていた影響で不足気味だ。ただし、後発品製造メーカーでの不正の発覚で生産能力が低下していることも一因だ。
これだけ高く売れるなら、悪の尽きない世の中だから、野生猿を捕獲して一攫千金を企む人が出てきても当然だ。しかし、2022年11月にはカンボジアで野生猿を捕獲して、飼育サルと由来を偽って米国に輸出したことが発覚して、6人が逮捕されている。2018年にはカンボジアから約1万頭のサルが輸出されていたが、2019年と2020年の2年間で約3万頭が輸出されたそうだ。飼育しているサルの数を考えると年間で5000頭も輸出数が増えるはずがないことから発覚したらしい。「天網恢恢疎にして漏らさず」ではなく、「頭隠して尻隠さず」レベルのお粗末なやり方だ。
当然、飼育されたサルとは異なり、野生猿は感染症などに罹患している可能性もあり、育った環境などで、免疫状態も不均一だ。再現性のある信頼できるデータの取得は、医薬品、特に感染症ワクチンなどの開発には不可欠だ。やっていいこと、悪いことがわからない人が多くなると、不正の連鎖が止まらない。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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