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経営者をサポートする士業と呼ばれる専門家がいます。難関資格を保有する専門家として尊敬を集める一方、同じ資格保有者でも仕事内容や方針、そして能力も当然異なります。

「有能な『「プロ士業』」がそばにいれば、中小企業が資金繰りに困ることはありません。一方、顧客に貢献しない士業と契約している場合は損をしていることもあるんです。」

そう語るのは、士業向けの経営コンサルタントで自身も士業(特定行政書士)である横須賀輝尚氏。同氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」から、プロ士業の見抜き方を再構成してお届けします。

士業を単純な「価格」で選ぶことで生まれる大きな「損」

士業を選ぶひとつの基準に「報酬額」というものがあります。

士業はもともと報酬が法律によって決められていました。実は平成になってからも法律で定められていた士業があったほどで、この自由競争経済の中で驚くばかりです。いまは完全に自由になっていますので、どの士業であれ事務所によって相当バラツキがあります。税理士の顧問料も月額1万円を切るような事務所もあれば、月額数十万円なんて事務所も。

では、そんな極端にバラツキのある報酬額をどう考えるのがベストなのでしょうか?

まず、士業に依頼する仕事の内容から考えます。あなたが依頼したいのが、単なるアウトソーシングなのか、それとも「考えてもらう」仕事なのかを分けて考えましょう。アウトソーシングなら、当然作業代行なので価格を追求しても構いません。代行作業なら、事務所によって大きな差はないと考えて大丈夫です。なので、あなたの予算に応じて安い事務所を探してみるのもひとつの選択肢です。

ただし、報酬額の目安としては、「相場」くらいの報酬額を設定している事務所を選ぶべきです。これは私が士業側の人間だから、士業の気持ちを代弁しているのではなくて、事故防止の観点からのアドバイス。中には信じられないくらい安い報酬額を設定している事務所もありますが、事故のもと。説明するまでもなく、安く受けるということは数をこなしている証拠であり、キャパを超えた業務を受けている可能性もあるので、あまりお勧めできません。

要は、安かろう悪かろうです。安い金額で受注すれば、当然その士業のモチベーションも低いので、やはり事故のもとです。相場かどうしても予算が厳しければ、その少し下。あまりにも低い報酬額での依頼は勧めません。

これに対して、コンサルティング業務やそのほか高度なことをお願いしたいのであれば、報酬は絶対にケチるべきではありません。高い報酬が、士業のポテンシャルを引き出します。

結論からいえば、高い報酬を提示して、何ができるかを提案させるのが最大の活用方法です。例えば、コンサルティング契約を月額で契約する場合に、5万円の契約料を士業から提示されたら、逆に10万円を逆提案してみましょう。10万円なら、何ができますか?と。それであなたが求める内容が返ってこなければそれまで。それは「考える」士業ではなく、つまりプロ士業ではありません。

あなたも経営者であれば、これはわかるでしょう。「コストは徹底的に押さえる」「会社を伸ばす投資は積極的に行う」。代行業務はコスト。コンサルティングは投資です。ですから、士業に提案させる。単に提案させるだけでも良いのですが、金額が上がればそれだけ士業も真剣になります。コンサルティングの力量も読めます。そうすることによって、あなたが求める結果も、自ずと近づくでしょう。

ちなみに、提案「させる」と言ってますが、上から目線でやったら駄目ですからね。あくまでもプライドをくすぐる方向で。「先生、もし10万円で契約させていただける場合、どのようなことをやっていただけますか?」こんなニュアンスが良いでしょう。