機体の傾斜と墜落:制御不能に陥った航空機

 機体が傾き始めると、翼の位置の関係で自動操縦は高度を維持できなくなった。クドリンスキー機長は事態の深刻さを悟り、息子に「エルダール、そこから離れろ! 後ろへ下がれ、エルダール! 危険なことが分かっているだろう? 出ろ、エルダール! 出ろ、出て行けと言っているんだ!」と叫んでいる。このコックピットの音声は、ボイスレコーダーに収められており、事故当時の緊迫した状況を物語っている。

操縦士たちは機体の制御を取り戻そうと試みたが、過剰な修正操作により、機体はほぼ垂直に上昇し、失速、そして螺旋降下に陥った。山岳地帯の上空で急速に高度を失った593便は、午前0時58分、制御不能になってからわずか2分後、ロシア南部ケメロヴォ州のクズネツク・アラタウ山脈に墜落した。墜落時の垂直速度は時速約257キロと推定され、生存者はいなかった。