だが、振り返ると結果としてこれで良かったと思っている。確かに蓄財のタイミングはかなり遅くなったが、その代わりに今からどれだけ大金を払っても決して買うことができない経験や思い出という価値に交換できたからだ。
そう考えると実は人生全体でお金の最適化をするのは相当に難しい。「ただただ資産運用でお金を限界まで増やす」という目的なら、節約して資産を買い続けるだけなのでシンプルでなんの迷いもない。だが、年を取ってから大金を得てもお金から価値を引き出す力が衰えてしまえば、せっかくの大金も価値が薄れる。
このあたりは名著DIE WITH ZEROでも「多くの人は死ぬ時に最もお金持ちになる」という目の覚めるような言及がなされている。
お金のかからない娯楽を楽しむ若い頃にお金を使うべきだが、お金は若い頃から貯めておきたい。この矛盾を解消するための個人的なおすすめとしては、お金のかからない娯楽を楽しむということだ。
その筆頭が勉強と仕事だ。40代になり、お金を払って受け身の娯楽から幸福を引き出すことは難しくなっていくのを感じる。だが、勉強と仕事だけは昔からずっと楽しさは変わらない。いや、むしろ昔より楽しさが高まっていると感じる。
たとえば昨今流行りの生成AIについていえば、月額約3万円の「ChatGPT Pro」が話題になっている。
自分も本格的に生成AIの使い方を学ぶために、AI開発者やデータサイエンティスト、大学の研究者の発表や勉強会をオンラインだけでなく、直接参加しに行っている。しっかりとお金を払って聞きに行くつもりでも、そうしたイベントは大抵無料で行われている。だが、正直言ってどんな有料エンタメよりも面白く、学びが大きいと感じる。
またこうしたAIのような先端テクノロジーが高度化するほど、使用者のレベルがしっかりと結果に反映されるようになっている。若い頃に比べてレベルアップを続けることで、AIもそれに呼応して良い結果を出力してくれる。こうなると自分自身がさらに賢くなるための学ぶ意義を実感でき、ますます楽しく勉強ができるのだ。