黒坂岳央です。

本稿のタイトルはかなり大げさな数字ではあるが、遠からずあたっていると感じる。年を取れば取るほど、人はお金から引き出せる価値が減っていくことで知られる。

若い頃に人生を豊かにしたり、幸福にするためのコストは非常に安く済む一方、年を取るとそのコストは肥大化する。それ故にいかにお金を若い頃に使えるか?ということが人生のテーマそのものになると思っている。

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人生は「飽き」との戦い

若い頃はすべてが新鮮に感じる。それ故に何を見ても聞いても面白い。だが、一通り経験するとあらゆる体験に「既視感」を覚えるようになる。

筆者は昔「いつかカニを食べてみたい」という密かな願望を持っていた。”カニもどき”はよく食べていたが、本物のカニは食べたことがなく、漫画やアニメで描かれるカニを食べるシーンを見るたび、その夢を膨らませていた。

そのため、初めて北海道でカニを食べた時の感動は忘れられなかった。「これが本物のカニか!」と更に乗ったカニにカメラを向けて色んな角度から撮影をして「そこまで感動しなくても」と同行者を笑わせた。しかし、今はもうそこまで飛び上がるような感動はない。

高級な食事、ホテル、エンタメを一通り体験すると、もうお金を払って体験できる娯楽の中で新たに発掘したいものが消えていく。ものや体験を買うことはできても、フレッシュな感受性を買うことは二度とできないのだ。

人生全体でのお金の効率化

昨今、FIREブームで「若い頃の1万円は複利効果で将来の10万円の価値があるから、とにかくお金を受け取ったら金のなる木を買い続けろ」といった意見をよく見る。あくまで経済的合理性を考えるとこの指摘は正しい。ただ、この意見には大きな落とし穴がある。それは老化に伴い、お金から価値を引き出す力が衰えていく点だ。

若い頃、筆者は資産形成への活動はまったくやってこなかった。30歳になるまで給与はすべて、スキルアップや旅行などの自己投資や体験に全額投資してきたので恥ずかしながら30歳まで貯金は100万円もなかった。