今回も一週間ほど日本にいて強く感じたのは商品の豊富さ、種類の多さ、工夫の仕方など、高級店から100均まであらゆるジャンルで繰り広げられるマーケティングの壮絶な戦いに「これができるのは日本しかない」と呟かざるを得ない点でした。

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家電量販店に行くと似たような商品がずらっと並んでおり、何がどう違うのか、買う方が悩んでしまうのですが、各商品微妙に特徴を持たせています。100均に行くとまるでおもちゃ箱のように「へぇ、これも100円なんだ」と思わず手に取ってしまうような商品で溢れています。

そこにみられるのは激しい競争であります。日本の失われた30年と称される時期、我々は何を失ったのか、ふと考えてみると「値上げ」を忘れたのだろうというのが私のざっくりした思いです。値上げを忘れた理由は「景気が悪い」「低賃金」がマスコミを通じて国民に刷り込まれ、日銀も「こんな景況では大規模金融緩和をせざるを得ない」と決めつけたわけです。

ここが外から見る者との感性の違いでしょう。日本は30年も沈滞するほど景気が悪いとは思わなかったし、仮に値上げしてもその値上げが妥当であり、消費者が納得すれば購入するだけの購買力はあったはずだと考えています。ただ、売る側は1%でも多くのマーケットシェアを求め、買う側は「1円でも安いもの」を探すことに専念する癖が出すぎたのだろうと考えています。

せっかく良いものを作っているならなぜそれを輸出しないのだろうと思います。が、問題は輸出するにはとても面倒な手続きや市場開拓、販売管理にアフターケアが求められる点でしょう。これが出来ない企業が多いのです。

例えば日本酒。酒蔵の数1400、銘柄数1万種ともいわれています。日本の飲み屋で誰でも知っているあの銘柄、この銘柄はマーケティングをしっかりして生産量を確保した酒です。ところがそれ以外の銘柄はマイナーであり、正直、よく知らない銘柄ばかりでごくわずかな情報で選ばざるを得ず、生産量も極めて限られるケースが目立ちます。これは欧米のワインや地ビールでも同じなのですが、個人的にはもったいないと思うのです。もっと効率的なマーケティングをすれば素晴らしい販売戦略ができるのに、と。

北米向けの日本酒はこの10数年、数量的には大きく伸ばしているのですが、ここから先はたやすくありません。理由は顧客が銘柄の差異を理解できないからです。酒屋も理解していないし、輸入販売を代行する代理店も「違いをうまく説明できない」のです。つまり、国際マーケティングという点からはほぼ行き詰ってしまうのです。