仕事は上司の背中を見て覚えろ
筆者が若いころ、研修ではなく現場で仕事を覚えろという姿勢が主流だった。いわゆるOJTというものである。パワハラなどは問題視されていない時代だった。
たとえば、普段は優しい上司が突如として怒り狂うことがあった。迫力があり、震えあがるほど怖かったのを覚えているが、「なぜ怒られたのか」などの具体的な助言は一切ない。
当時のリーダーは成果を上げていた者が昇進するケースが多かった。そのようなリーダーは鬼軍曹と言われていた。「売るまで帰ってくるな」「簡単にあきらめるな」「夢に日付をいれろ」「死ぬ気でやれば何でもできる」などの激が飛ぶ。
では、鬼軍曹が嫌われていたかというと、必ずしもそうではない。部下への愛情があったので上手く機能していた。酒場でお酒を酌み交わす時になると、怖い上司から優しい人間に変わる。励まされ、気遣い癒され、「よし、明日から頑張ろう」と元気づけられる。
しかし、いまは、社内を見回してみても、鬼軍曹タイプのリーダーは存在しない。リーダーが部下を叱りつけて従わせようとする光景も見られない。いつのまにか自分の考え方をうまく伝えられないリーダーが増えてしまった。リーダー像は時代によって変化するのである。
令和版のリーダーとは社内を見渡してもらいたい。「一言で説明します!」と言いながら、やたら話が長く「この人は結局何が言いたいんだろう」というリーダーはいないか。部下が聞く耳をもたなくなったらコミュニケーションは崩壊していくパターンのリーダーである。
最近の流行で、「ホメる」というものがある。途端に、社内ではホメるリーダーが増殖する。しかし、「ホメる技術」は簡単ではない。基準を明確化しなければ相手には響かないからである。
であるならば、方針を理解させて「ルールを策定する」ことも必要ではないか。「ルールの策定」は普遍的なものではなく柔軟に運用し状況に応じて改訂すればいいと理解しておく。しかし、ルールを策定してもいつの間にか忘れ去られてしまう。
リーダーは、伝える人によって定義や手法が異なるが、最新情報を入手しておくことでトレンドは理解できる。本書は、令和版のリーダー像が描かれている。さらに、事例が豊富である。新しいリーダー像を理解したい新入社員や新任管理職におすすめしたい。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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