今年は第7次エネルギー基本計画(エネ基)の年である。朗報は河野太郎氏の突撃隊である再エネタスクフォースと自然エネルギー財団が、エネ基の議論から排除されることだ。それを意識して朝日新聞は、再エネ擁護のキャンペーンを張り始めた。

再エネで産業競争力は低下した

こういうファンタジーは、3年前に日経が展開した「カーボンゼロ」キャンペーンと同じだ。日経は最近おとなしくなったが、朝日の石井徹という編集委員は「再エネ普及の遅れは、日本の産業競争力喪失の一因」だと書いている。

これは「再エネ普及は日本の産業競争力喪失の一因」の間違いだろう。再エネ賦課金のおかげで日本の電気料金はアジア最高になり、製造業は海外に流出した。国内にできたソーラーパネルの75%は中国製で、中国の産業競争力には多大な貢献をした。

世界の脱炭素化をリードしているドイツ経済は欧州で唯一マイナス成長になり、また「欧州の病人」と呼ばれている。再エネ原理主義の左翼政権が、天然ガスの供給が止まっている最中に原発を停止し、電気料金がヨーロッパ最高になって企業が海外に流出している。

GX実行会議資料より

その原因は、脱炭素化投資の収益率はマイナスだからである。これはたとえば鉄鋼業の水素還元製鉄を考えるだけで明らかだ。これは石炭(コークス)の代わりに水素を使って鉄鉱石を溶かす技術で、CO₂排出量がゼロの「グリーンスチール」ができるが、その単価は高炉の2倍である。

しかしできた鋼材はまったく同じなので「これはグリーンスチールだから2倍の価格で買ってください」といっても買う会社はない。つまり鉄鋼メーカーのコストは2倍になり、価格は同じだから、水素還元製鉄の投資収益率はマイナスなのだ。