イスラエル側が発表した「UNRWAに450人以上のハマス戦闘員が雇用されていた」という指摘は深刻だ。UNRWAは3万人以上の職員を抱え、そのうち1万3000人がガザで従事している。彼らの大部分はパレスチナ人であり、学校や医療機関での難民支援に従事している。問題は、学校でUNRWA職員のパレスチナ人教師が子供たちに反イスラエル、反ユダヤ民族の教育をしていることだ。学校はハマスの“戦闘員育成の予備機関”となっている。ネタニヤフ首相がガザ戦闘後の統治でUNRWAの解体を強く主張しているのは当然だろう。UNRWAがガザ区で第2、第3のハマスを養成している限り、イスラエルとハマスの戦いは終わらないからだ。
イスラエル外務省は4日、ハマスの奇襲テロでの性的虐待問題を扱った今回の報告書を軽視するような姿勢を取っているアントニオ・グテーレス事務総長に対して激怒し、イスラエルのカッツ外相は在国連イスラエルのギラド・エルダン大使を「直ちに協議するため帰国するように」と指示している。理由は「10月7日にハマスとその同盟者が犯した大量強姦に関する情報を国連側は隠蔽しようとしている」というものだ。
専門機関を含む国連機関は戦後、世界の平和実現、紛争防止を目標として創設され、世界各地で働いてきた。平和実現や紛争解決に成果があったこともあるが、国連は加盟国の外交舞台という事実に大きな変わりはない。その外交は国益重視を第一目標としている。そのような加盟国が寄せ集まったのが国連だ。だから、公平な判断や議論が難しいケースが出てくる。ウクライナ戦争でも安保理常任理事国にロシアや中国が入っている限り、ウクライナ問題で国際社会のコンセンサスを打ち出すことはできない。同じことがイスラエルとハマス間の戦闘でも言えることだ。
例えば、開発途上国の工業、経済の発展を支援する国連工業開発機関(UNIDO)は現在、中国が自国の利益のために完全に支配している。コンサルタントと呼ばれる中国職員がUNIDOに溢れている。彼らの一部は情報員だ。
UNIDOの李勇前事務局長は在任時期、2018年4月の中国メディアとのインタビューの中で、「 UNIDOは中国共産党と連携し、習近平主席が提唱した『一帯一路』関連のプロジェクトを推進させてきた」と述べ、本音を堂々と表明していた。李事務局長が2期の任期を終えると、ドイツのゲルト・ミュラー氏が2021年12月に就任したが、中国は新事務局長を北京に招き大歓迎したばかりだ。ミュラー氏自身も UNIDO最大の分担金拠出国の中国の言いなりになっている。(UNIDO第2の分担金を担う)日本を含む加盟国の資金が中国に利用されているのだ。
ハマスはこれまでパレスチナ人職員が運営するUNRWAに集まるパレスチナ人救援資金をテロ資金に利用してきた。救援資金を統治し、管理すべき責任があるUNRWAは他の国連専門機関と同様、ハマスにその統治権、管理権を奪われてしまっていたのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年3月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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