- 人間としての幸福を目指す
中迎聡子氏はいつも、3つの「いき方」という話をします。彼女は言います。
人間には「3つのいき方」が大事だと思っています。
1つは「生き方」。これは生命としての生き方で、もちろん命あっての人生ですから大事なことです。
2つ目は「活き方」。人は植物ではありませんので、活動することが非常に重要です。もちろん寝たきりで活動出来ない、という人もおられるので一概には言えません。それでも私達がその方の「活き方」を意識するだけ、寝たきりでも出来ることがあるかもしれないのです。事実、いろ葉にも寝たきりに近い方々も多数おられますが、こちらの関わり方次第ですごく変わられます。
病院では完全に寝たきり、絶飲食で管から栄養を摂っていたのに、いろ葉に退院してから口から食事を摂り、歌を歌えるようになった方が2人います。一人はピアノを弾かれるまでになりました。小児麻痺でほとんど歩けない、言葉も喋れないのに亡くなるまで独居を継続した方もいます。私達に「活き方」の視点があるかないかで、大きな差が生まれてしまうのです。
3つ目は「逝き方」。とても残念なことですが人は必ず死にます。その自分の最期を意識できるか、そうでないか、そこで人生の質はまるで変わってくると思います。とにかく「生きる」ことだけを目的にリスクゼロの安心・安全を求めて「面会制限・外出制限」を受け入れるのか、「逝き方」と「活き方」を意識して身近な人々と親密に交流するのか…施設側も、高齢者・ご家族の側もそこを意識できるか出来ないか、で人生の質が大きく変わってくるのではないかと思います。
人間は必ず死ぬ。その最後の瞬間までどう生きるのか?
人生の根源的な問いを投げつける中迎氏。
その問いにどう答えるか。
「感染対策」というもっともらしい医学の皮を被った近視眼的な空気に抗えず、なんと4年間も「面会制限・外出制限」を続けてきた医療・介護業界は彼女の問いに真摯に向き合うべきでしょう。
行政・医療業界・メディアによる感染恐怖の大合唱は、「高齢者は感染症に脆弱なので接触禁止・隔離」という概念を徹底的に世間に植え付け、その結果医療介護の現場は「安全・安心神話」という錦の旗のもと「面会制限・外出制限」を続けてきました。
世間がほぼ通常モードに戻っている今、それでもこの安全神話と感染対策は当たり前のように続いています。つまり、特に何もなければ今後もこの状態が「常態化」する…ということが容易に想像できます。
果たして、人生の先輩である高齢者の方々の人生を「面会制限・外出制限」のまま終わらせて良いのか。
医療・介護業界、いや社会全体で考えるべき問題です。
中迎氏の発言と行動は、そのいい契機になるのではないでしょうか。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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