コロナで自動車生産が計画通り出来ず、受注残が積みあがる中、業界は超繁忙期であったと思います。一方、社会はコンプラにガバナンス、更には新たなルールがどんどん生まれ、末端は覚えるだけでも大変な状態になります。当然ながら人事も生産側に多めの配員にせざるを得ず、安全や管理という面ではおろそかになります。トヨタは世界一の生産台数を誇るわけですが、それを維持し、かつ、顧客の満足度を得るために末端の社員を犠牲にせざるをえなかった、ということでしょう。

報告では「組織的な不正を示唆する証拠はなかった」とあります。要はせいぜいリーダーまでの認識で組織的な問題ではないというわけです。そんな阿呆なことがあるわけありません。不正は1989年から34年も続いています。当時平社員や工員でも時代と共に当然、ベテランになっていくのです。会社としてそういう事実があったことは多くが知っていたけど「見ないふり知らないふり」だということです。第三者委員会の報告書は証拠を積み上げるので「そんな昔の話は…」だし、当時の管理職は既に退職している人も多いでしょうから判明せずという結論だったと察しています。

この問題、たまたまトヨタグループに集中していますが、当然ながら他の大手企業でも毎月の様に問題が起き、「謝罪の文化」なるものが生まれ、コンサルタントは企業に「謝罪会見のABC」を伝授し 、日経ビジネスでは各社の謝罪について批評をする特集まで組むわけです。くだらないというか、日本的であると言わざるを得ないのです。

結局、下部組織が声を上げることができないことに問題の本質があると見ます。そして80年代から続く問題に関して社会の意識や社員の仕事に対するスタンスはすっかり変わったのに同じやり方を繰り返していてはそれは成長が無さすぎると思います。

実に日本的であり、毎度の話であり、残念というか、またどこかで起きるのだろうな、としかコメントできない事件だったと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年12月21日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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