英国の推理作家アガサ・クリスティ(1890~1976年)の名探偵小説の主人公エルキュール・ポワロの「小さな灰色の脳細胞」は難解な事件を事実の積み重ねから論理的な思考で解決していくが、当方の「小さな灰色の脳細胞」は残念ながら論理的な思考からはほど遠く、直感と推理によって事件の背景を追っていく。以下の話は、当方の灰色の脳細胞に浮かび上がった思考を論理的ではなく、思いつくまでに書き綴る。
イスラエルが1日、イスラム過激テロ組織ハマスが戦闘休止の合意内容に違反したとしてガザ戦闘を再開したというニュースは少し残念だったが、ネタニヤフ首相ら戦闘内閣には他の選択肢がなかったのかもしれない。ハマスは戦闘休止が終わる直前、ロケット弾をイスラエルに向けて発射した。戦闘休止の延期を模索していたイスラエル側は、ハマスの戦闘再開の意思表示と受け取らざるを得なかったのだろう。
戦闘再開については、米国から強い制止の圧力がかかっていた。ブリンケン米国務長官がイスラエル入りしたばかりだ。ハマスの壊滅を図るネタニヤフ首相にとって余り時間が残されていないことが分かってきたはずだ。急いで今、ハマスを叩かないと、米国と国際社会からの戦闘中止への圧力が高まり、「ハマス壊滅」の目標を達成できなくなるという焦りがあっただろう。
参考までに、欧米メディアがハマスの10月7日の奇襲テロ計画をネタニヤフ首相は事前に詳細に知らされていたと報じたこともあって、同首相を取り巻く国内外の圧力と批判は高まってきている。注意しなければならない点は、中東紛争の場合、多くの偽情報が流れてくることだ。当方の「灰色の脳細胞」によると、「詳細な情報ほど偽情報が多い」ことだ。偽情報であるゆえに、それが正しいことを証明するために長く、詳細になっていくからだ。曰く、「詳細にわたる、長い情報には気を付けよ」だ。
当方が「イスラエル・ガザ戦闘」で考えているテーマはこのコラム欄でも数回、紹介したが「平和」と「公平・正義」の選択問題だ。イスラエルは現在、10月7日のハマスのテロ奇襲への報復を実行し、失われた公平・正義の回復に全力を投入している。一方、イスラエルの自衛権を認める欧米諸国はここにきてガザ住民の人道的危機のカタストロフィを回避するために戦闘の休止、停戦を呼び掛けてきた。
テロの実行者はハマスであり、大多数のパレスチナ住民はガザ戦闘の犠牲者だ。イスラエル側はテロ実行者のハマスへの報復を履行する中で、ガザ紛争でパレスチナ住民の犠牲をも強いてきた面がある。イスラエル側は「ハマス撲滅」を継続する一方、パレスチナ住民の安全を確保しなければならない、といった難問に直面しているわけだ。