黒坂岳央です。

いつの時代でも子供の習い事人気ランキング上位に「英語」が入っている。自分の知るケースでも「英会話教室」「英語スクール」に我が子をせっせと通わせる親は大変多い。「これからのグローバル化の時代、我が子に外国語を」という熱い想いで巨費を投じる熱心な保護者は多いが、その熱意とは裏腹にこうした教育を受けて英語が使えるようになった子供の話はほぼ聞かない。なぜだろうか?

正直、水泳や料理教室など英語を同列に考えるべきではない。幼少期からスクールに入れれば自動的に上達する水泳などとは異なり、英語は本人に主体的な学習意欲、加えて親が外国語について理解していなければできるようにはならないと主張したい。その根拠を取り上げる。

monzenmachi/iStock

英語と他の習い事の絶対的な違い

水泳やサッカークラブなど子供に習い事をさせれば、当然だがかなりの程度上達する。もちろん誰もがプロレベルになることはできないが、きちんと通って訓練の回数をこなせばほぼ確実に一定レベル以上には達する。なぜか?それは上達するためのフォームが確立されているからである。

うちの子はもう何年も水泳を習わせているが、もはや筆者よりよほど上手に泳いでみせる。本人は上達意欲はそれほどなく、正直積極的に行きたいわけではないとこぼしまがらも現在はしっかり上達した。理由は簡単、上達するフォームを教師が教え、本人は徹底的にそれをトレース、ズレたら軌道修正を受けることを繰り返してきたためだ。水泳上達のフォームは決まっており、誰でもその通りにやれば伸びる。上達の再現性は極めて高い。これは料理教室なども同じで、徹底して自己流を廃してレシピに逆らわずトレースすればどれだけ不器用な人でもある程度の料理はできるようになる。

ではなぜ、英語は習ってもほとんどの子供はできるようにならないのか?もちろん、できる子はゼロではないが、それでも習い事に参加するプレーヤー全体の母数からするとあまりにも少なすぎる。その理由はシンプルだ。スクールが英語力向上の方法論、上達に必要な努力量、優先順位を知らないか、間違ったカリキュラムで教えている事が多く、加えて英語の場合は上達を実感できるまで必要な期間、努力量が水泳や料理とは比較にならないほど大きなオーダーになるからである。

英語ができない英語教師

自分は英語を教えている立場だが、英語スクールで子供を指導しているという立場の方から英語力上達の相談をよく受ける。「自分ができないのに先生を名乗って教えているのが心苦しい。質問されても答えに窮する事が多いので学び直しをしたい」というのである。英語のできない英語の先生はかなり多いと思っている。

「子供に英語を教える上で高い英語力は不要だ」という人はいる。確かに知識、技術面だけいえばその主張は正しい。だが、自分が上級者になるまで苦心惨憺し、時に挫折を乗り越えて忍耐強く勉強してきた経験なくして他人の挫折をすくい上げる力はあるだろうか?必要なのは難しい英単語を知っていることより、学習者の指導力であり残念ながら指導力は本人が英語にコミットした経験に比例していることが多い。