未接種群の有害事象の発生率が有意差の検出されやすさに影響を与えるという点も重要です。未接種群の有害事象の発生率は、有害事象ごとに異なります。その発生率が高くなるほど有意差は検出されにくくなる点に注意が必要です。

コホート研究のもう一つの欠点は、未知のバイアスや補正困難なバイアスが存在している場合には、関連性があったとしても、有意差が検出されない場合があるということです。

この具体例としては、コロナワクチン死亡事例の分析においての疾患重症度バイアスというものが挙げられます。コロナワクチンは全身状態の悪い人には接種しないことが推奨されました。そのため、未接種群には全身状態の悪い人が多数含まれている可能性が高いのです。疾患重症度バイアスが適切に補正されないと、正しい結果が得られません。

Takeuchiらは日本のコロナワクチン安全性に関するコホート研究の論文を発表しています。そのなかで、接種後死亡とワクチンとの関連性の分析していますが、疾患重症度バイアスを適切に補正できていませんでした。何故ならば、このバイアスを診療報酬明細書データを用いて補正したからです。このデータには疾患名は記載されていますが、疾患重症度は記載されていません。

SCCS法はこのバイアスの影響を受けますが、SCRIデザインは受けません。何故ならば、SCCS法の対象は接種群と未接種群なのに対して、SCRIデザインの対象は接種群のみであるためです。したがって、2つの統計手法を用いる場合には、コホート研究とSCCS法の組み合わせより、コホート研究とSCRIデザインの組み合わせが推奨されます。

世界で公表されているコロナワクチンの安全性に関する論文数を調べてみました。結果は、コホート研究単独:276編、SCCS法単独:59編、SCRIデザイン単独:3編、コホート研究+SCCS法:4編、コホート研究+SCRIデザイン:3編でした。

私が推奨するコホート研究とSCRIデザインの組み合わせは、わずかに3編でした。したがって、結論は「コロナワクチンの安全性に関する研究には改善の余地があり、不十分である」ということです。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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