(1)個人事務所(ひとり〜数名の職員を抱えた事務所。ひとり法人も含む。) 代表士業個人に、強く依存します。その代表士業の力量がすべて。職員が数人いる場合でも同じ。ほとんどの場合、ダイレクトに士業に相談できる点がメリット。個人差はありますが、土日祝日関係なく相談したい場合は、個人事務所との契約が有効です。法人は平日日中対応が多いので。ただし、代表士業への依存度が高いので、その士業が事故や病気になれば業務はストップしてしまうのが最大のネック。士業の多くはこの「個人事務所」に属します。

(2)法人(または10名以上の事務所) 大量受注が可能なのが特徴。多くの場合、代表士業が有能だとしても、末端の所属士業や職員が実務も熱意もトップに追いついていないことが多いといえます(あくまで傾向です)。個人事務所が、代表士業への依存度が高いことに比べ、法人の場合は複数の士業がいることから、ひとりが事故病気にあっても、替わりの担当者がつきますので、その点は安心です。ただし、法人=組織化なので、土日祝日の対応までしてくれる事務所は少数派。そんなところが特徴と傾向です。

では、どちらが良いかといえば、現段階ではやや個人事務所に軍配が上がります。なぜかというと、プロ士業は属人的な仕事なのです。つまり、個人の力量を見極めて依頼、契約するわけですから、大規模事務所だと担当士業ガチャを回すことになります。もちろん、中にはいます、有能な所属士業も。ただ、こればかりはガチャ次第なので、なんとも言えません。別の言い方をすれば、個人事務所の方が、見極めがしやすいともいえるでしょう。

「でも、もしその先生が事故や病気にあったら?」

その心配は、ストレートに士業に聞いてみてください。事故や病気は、正直防げるものではありません。そんな質問をするあなたも、事故や病気に遭わない可能性はゼロじゃないですよね?なので、そういった自身不在時の準備はできているか?それだけ確認して、もし良いプロ士業に出会えたら、健康管理をどのようにしているかだけ、確認しておきましょう。

プロ士業は、当然プロ士業とつながってますので、万が一の場合もきちんと後任を探してくれます。まあ、そういったリスク・マネジメント的なことも含めて、やはりプロ士業なんです。

別の言い方をすれば、それだけ「ただ士業がいる」のと「プロ士業を懐刀にする」のは違うということです。契約した士業が、本当に替えの効かない人材であり、卓越した知識と業務レベルを持っていて、さらに顧客との信頼関係もバッチリ…という状況で、たかだか事故や病気で数ヶ月直接の仕事できない状態では契約解除しませんよね?回復を待つはずです。それだけ、プロ士業は替えの効かない人材ということになります。

「プロ士業」は取り扱う業務範囲を気にしない。

どの士業にどんな業務を頼めるか。これも案外知られていないものです。裁判なら弁護士、税金なら税理士…くらいは知られていたとしても、細かいそれぞれの専門分野はなんとなくしか知らないという人がほとんどでしょう。結論から言えば、これらについてあなたが学ぶ必要はありません。どんな士業にどんな内容の相談をしても構わないのです。

もちろん、それぞれの業法と呼ばれる法律があります。税務相談は税理士。登記なら司法書士とそれぞれの分野があり、原則として業法に定められた範囲でしか相談ができないことになっています。ですから、会社をつくって事業を興したい…と税理士に相談にいっても、「会社設立登記は司法書士ですから、司法書士に相談してください」と言われることもしばしば。ただ、ここでも士業とプロ士業の差が出ます。

プロなら、「ハブ」機能を持っていなければなりません。どのようなジャンルの相談が来ても、自分ができることは自分で対応。そのほか、自分の資格で対応できない業務については、自身の士業ネットワークですべて紹介等で対応する。そういう体制を取るのが最低限のプロ士業です。ですから、あなたは誰に何をと考えることなく、まずは士業と名のつく事務所に相談をすればいい。

このとき、「資格が違うので対応不可能です」とだけ返ってくれば、それは単なる士業(というか、士業以下)。きちんと整理整頓して体制をつくってくれるのであれば、最低限のプロ士業の役割を果たしてくれているといえます。突き返された士業には、相談も依頼もしなければいいわけで、最初から除外することができる。そういう見方もできます。

すなわち、プロ士業とはある種のゼネラリストでなければならない。そう捉えてもらうのが正解です。例えば、会社を作りたいと司法書士の事務所に相談に行く。間違いなく、登記はできるでしょう。ところが、ただ登記だけを専門にしている司法書士だと、このあと税金のアドバイスがありません。

法人を設立した場合で、青色申告で決算申告しようと考えていたら(というか、普通は青色申告でやります。控除があるので)、原則として会社設立の日から3ヶ月以内に青色申告承認申請の手続きを取る必要があります。間に合わなければ、当然白色申告となり、控除は受けられません。登記だけでなく、税務にもある程度精通している司法書士ならば、必ずこの点に触れます。

つまり、それぞれの資格の専門家というだけでは、プロとは呼べないのです。もちろん、依頼はこなしているわけなので、この場合の司法書士に責任があるとも強く言い切れず、ミスなのかどうかも判断が難しいところですが、依頼者に起きる損害は大きく、実質的にはゼネラリストでない士業の行為は重罪だといえるでしょう。

実際、この手のミスは多いものです(もう、ミスと言います)。ほかにも会社設立時は、新しいサービスを手掛けるなら商標や特許についても確認する必要がありますし、プロとして気づかなければならない点は潜在的に多くあります。ですから、ゼネラリストであることもプロ士業の要件といえますし、別の言い方をすれば、「気が利かない」といけないわけです。

「ぞれぞれ、法定の相談範囲があるのであれば、別の分野のアドバイスは違法なのでは?」という意見もありますが、そのあたりは別の士業を紹介するなりやり方はいくらでもあります。あんまり深いことまで書けないのですが、違法なことをする士業は論外として、気が利かない士業に仕事を頼むべきではない。ここまでいえば、わかりますよね?

そもそも、これだけ国家資格が専門分野ごとに分かれているのは日本くらいのもの。諸外国のほとんどは、弁護士と会計士くらい。これは日本特有の問題なのかもしれませんね。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士 1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。 会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年12月20日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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