故に、コスト削減ではなく、リスク削減を経営課題にすべきなのである。リスク削減を徹底化させた結果として、コストが上昇しないのならば、必ず真の付加価値が生まれているのである。逆にコストの上昇を伴うリスク削減を行う利益誘因は経営者にはないので、経営課題としてリスク削減を掲げれば、コスト削減における弊害を回避できるだけでなく、課題が実現される限り、必ず付加価値が創出されるはずである。
リスク削減の難点は、平時においては、創造されたはずの付加価値は常態においては潜在化していて見えないことである。しかし、危機においては、リスク削減の見えなかった効果が一気に顕在化する。実は、危機のたびに100年に一度などといわれるが、実際には、危機は頻繁に訪れるから、経営者の在任中に何らかの危機が発生すると考えるほうが自然なのであって、リスク削減の効果が危機において顕在化するのならば、多くの場合、リスク削減という経営努力は報われるわけである。
リスク管理の要諦は、危機において発生するコストを最小化できるように事前の備えをしておくこと、即ち危機管理につきるのである。そして、危機管理においては、それに要する現在のコストの上昇が当然に許容されるので、危機管理の徹底は、経営者の意識を、欺瞞にすぎないコスト削減から、危機管理の一部としてのリスク削減へ移行させる好機となる。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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