国民投票、温暖化対策を推進する改正二酸化炭素法を否決(2021年06月17日付JETRO)
2020年6月に議会で可決された改正CO2法(2020年6月17日記事参照)では、ガソリン税の引き上げ、化石燃料を使用する暖房によるCO2排出量の上限設定、スイス発のフライトに対して航空券税を課すなどの内容が定められていた。徴収したCO2税の3分の1、航空券税の最大2分の1の金額が、気候変動に配慮した技術を開発する企業支援や、充電ステーションなどのインフラ整備の投資を支える基金に投入される予定だった。連邦参事会は、改正法での新たな課税は妥当な金額の範囲内で、パリ協定で掲げた2030年までにスイスの温室効果ガス排出量を1990年比で半減させるという目標達成のために重要な改正として、賛成票を投じるよう国民に呼びかけていた。
スウェーデン。
気候変動への転換 – 環境のパイオニアからエネルギーの現実主義者へ(2023年9月25日付Blackout-News)
スウェーデンは現在の計画では2045年の気候ニュートラル目標に到達しない。その理由のひとつは、減税によってガソリンが安くなり、消費が増える可能性があるからだ。
エリザベス・スヴァンテソン財務相は、政府は長期的な目標を念頭に置いているが、今は生活費の高い国民を支援したいと強調した。”多くの人々にとって非常に厳しい時代であることを忘れてはならない”
(中略)
ウルフ・クリスターソ ン首相は昨年、環境省を閉鎖し、今後の方針を示した。政府は高速鉄道の拡張を中止し、電気自動車へのボーナスを廃止し、環境保護基金を削減した。ガソリンに占めるバイオ燃料の割合も減らされる予定だ。
(中略)
今のところ、スウェーデンでは、若者からも高齢者からも、この方向転換に対する抗議はほとんどない。経済的課題によって、気候保護は後景に追いやられている。
英国。
もう脱炭素のコストを隠さないスナクの歴史的演説
最も重要なことは、保守党にせよ労働党にせよ、「歴代の英国政府はネットゼロのコストについて国民に正直でなかった」とはっきり断罪したことだ。コストについての議論や精査が欠如していた、とも言った。これらをすべて変え、今後は、難渋な言葉で誤魔化すのではなく、正直に説明する、とした。
地球環境や将来世代のために脱炭素が必要です、と根拠なく言うだけなら誰も反対しませんが、多大なコスト負担や生活への影響を示されれば国民が反発し国の脱炭素目標が後退するのは当然の帰結です。
こうした各国の動向や今回のトリガー条項凍結解除を巡る国内世論から、日本政府がカーボンプライシングを具体化しても国民の反発を買うため家庭部門での導入は極めて困難であると考えられます(従って、再エネ賦課金のようなステルス導入に注意が必要)。
一方、産業部門に対しては着々と準備が進んでいます。産業部門からも大きな反対の声が上がって議論になればよいのですが、残念ながら経団連はカーボンプライシングに賛成の立場です。「適切なタイミング」「成長に資する仕組み」なんて絵空事であり、ひとたび導入されれば産業界全体の競争力が低下するのは明白です。
・カーボンプライシングは企業の内部管理に使えない
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提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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