嘘にまみれた論文が増えている現状は、大気汚染が急速に広がっているようなものだ。近年、科学の分野では真贋相混ぜた論文が発信され、科学の根底が揺るがされようになってきている。2022年に発表された論文の2%、50編にひとつがフェイク論文であったという推測もある。生成AIの発達に伴って、さらに多くの巧妙なフェイク論文が生み出されるだろう。当然ながら、これらを見つけだすプログラムも開発されつつある。
出版社・研究者の集団が、フェイク論文の摘発に向けた取り組みを進めており、記事にはねつ造拠点が、南アジア、中国、ロシア、イランなどにあると記述されていた。確かに、論文数を増やすことに汲々としている研究者にとって、何の労力も必要なく、お金だけで論文数を増やすことに気持ちが動いているのだろうが、砂上の楼閣は間違いなく簡単に崩れ去るものだ。デジタル雑誌が簡単に発行されるようになったが、科学は真偽取り混ぜ、複雑怪奇となった。
競争が激しいのでフェイクで実績を積み上げるのは仕方がないと擁護する声もあるが、お金がないので万引きをしてもいいという理屈と同じで、基本的な科学者倫理の問題だ。政治には表に出せないのお金が必要なので、裏金を作るのは仕方がないという言い訳と重なってくる。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?