しかし、このような利用するために担ぎ上げる女性抜擢はもはや時代遅れ、政界だけで通用するやり方ではないだろうか。実際、上記の女性たちは、経歴を見る限り、いずれも所属組織の叩き上げ、能力も経験も申し分がなく、実力によって選ばれことは間違いない。もっとも、あくまで私の推測に過ぎないが、遜色のない実力に加え、組織側に女性を積極的に登用しようという意図も多少あったかもしれない。
実力が拮抗している場合、組織の戦略として女性を選ぶとことはあり得る。というのも、男性優位組織における女性の抜擢は、組織イメージの改善に効果的だからである。事実、芳野氏の登用は連合の好感度を多少ながら挙げたように思われる。芳野氏は明るい衣装がお好みで、ソフト路線のアピールにはなかなか効果的、色に例えれば暗めのダークカラーが明るい暖色系に変化した感じだ。
テーマパークも航空会社も多数の女性従業員を抱えるうえ、利用客の半数、もしくはそれ以上が女性だということを考えれば、女性がトップに立つのは自然な成り行きである。共産党の初の女性委員長登場も、連合同様、少なくとも外形的なイメージは和らぐ。翁新会長については、与党税調の影響力に翳りが見えるだけに、国民目線の政府税調への期待を高める効果がある。
男性優位の組織において、甲乙つけ難い人物が並んだときにジェンダーを選考の決め手にすることは推進すべき事柄だ。しかも、最近ではリーダー職に相応しい実力を持つ女性も増えてきており、ボーイズネットワークの中で、その能力を生かす機会が与えられ難いことを考えれば、積極的に女性登用を推進すべきであろう。
とはいえ、女性リーダーはほんの一握り、日本には依然著しい男女間の格差がある。政治参画、経済参画、教育、健康の4分野における男女間格差を男性1に対する女性の比率によって測定するジェンダーギャップ指数によると、4分野それぞれの格差は前から順に0.057、0.561、0.997、0.973である(内閣府「日本の順位:125位/146か国(2023.6.21発表)」。
政治ほどではないにしても経済分野で女性は男性の半分あまりしか活躍できていない。そのため、企業のトップに登用するよりも、まずは女性就労率、わけても正規雇用率の引き上げ、賃金の男女格差の是正、女性中間管理職の大幅増など労働市場における女性全体の底上げを図るべきではないかという意見があるかもしれない。
確かにそうではある。だが、全体の底上げには長い時間を要する。そこで、上流から流れを変え、その勢いを下流に及ぼすのも一つの方法ではないだろうか。「女性によって」ではなく、「女性が」自ら流れを変えることを期待したい。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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