心理学者の奇妙な反応
そこで、これらの疑問について心理学者などの否定派に質問してみましたが、楚の商人と同じで、誰もまともに返答した人はいませんでした。
さらに驚くべき事実を示しておきます。実は、上に書いた”矛盾”は私のオリジナルではなく、30年以上前に心理学者などが何回も指摘していたのです。
次は、「性格テストでは、血液型による差はあった」という典型例となります。
【論文1】山崎賢治、坂元章 血液型ステレオタイプによる自己成就現象-全国調査の時系列分析- 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 1991年
《結論》血液型と性格の自己報告との間の相関は、弱いが認められた。さらに、一般の人々の自己報告は、大学生の血液型ステレオタイプ(「A型は几帳面」のような有名な特徴)に合致していることがわかった(サンプル約3万人、両氏は1992年に続編を発表)。
【論文2】山岡重行、大村政男、浮谷秀一 血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2)) 日本パーソナリティ心理学会発表論文集 2009年
《結論》血液型項目を用いて自己評定をさせると多くの項目で血液型による(統計的な)有意差が見られる(サンプル6660人)。
心理学の性格理論は正しいのか【論文3】武藤浩二、長島雅裕ほか 教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究 2012年
《結論》血液型と性格に関する解析では、過去の研究結果(上記の論文1)を拡張することができたとともに、21世紀以降のデータでは安定して血液型ごとに性格の自己報告について有意な差が出ることが判明した(サンプル推定約23万人)。
これまた驚くべきことに、否定派はこれだけ根本的な矛盾を抱えているにもかかわらず、なぜか「関係ない」という結論だけは変わらないのです。
言うまでもありませんが、科学理論の基本は「再現性」であり、言い換えれば「誰がやっても同じ結果」が必要条件となります。
ところが、現実のデータはこのとおりで、心理学理論に基づく性格テストで血液型の差がないなら、理論自体が問題を抱えているとも考えられるのです。にも関わらず、「関係ない」との結論に固執することは、科学そのものを否定しかねない行為です。私は思わず頭を抱えてしまいました。
もっとも、よくある”反論”は、「自分で論文を書いて学会で発表しろ」というものです。そうしたら認めるとのこと。しかし、以上のことから、現実問題として日本の学会で発表しようとしても、門前払いされる可能性が高いでしょう。
そこで、解決策として英語の論文執筆に挑戦することを決意しました。足かけ3年の努力の末、ついに複数の論文を国際的なジャーナルに掲載することに成功。これらの研究成果は、次回以降詳しく紹介する予定です。
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金澤 正由樹(かなざわ まさゆき) 1960年代関東地方生まれ。ABOセンター研究員。コンピューターサイエンス専攻、数学教員免許、英検1級、TOEIC900点のホルダー。近著『古代史サイエンス』では、AIを活用して日中韓のヒトゲノムを解析し、同時に英語論文も執筆。
『B型女性はなぜ人気があるのか:AIと300万人のデータで読み解く「血液型と性格」』
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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