少数派のB型は悪く言われるのか

さて、よくある”反論”には、こんなものがあります。

心理学者X:少数派のB型が根拠なく性格を悪く言われるのは差別だ

日本人の血液型は、最多のA型が約40%を占め、2位はO型で約30%、3位がB型の約20%、そしてAB型の約10%の順です。確かに、B型は4つの血液型では割と少数派。

しかしこれだけでB型の性格が不当に批評されていると結論づけるのは早計かもしれません。実際に、私の新著『B型女性はなぜ人気があるのか』にもあるとおり、近年はB型女性の魅力が再評価されている事実があります。

特に注目すべきは、ビデオリサーチ社による「テレビタレントイメージ調査」のデータです。この調査によれば、過去10年間でB型女性タレントが高い評価を受け続けています。図にはありませんが、2024年1月度もB型の綾瀬はるかさんが1位でした。

さらに、AKB総選挙のデータでも、最終回の2018年には上位16人のうち半数がB型であるという結果が出ています。

性格に差があるように見えるのは”思い込み”のためか

よくある別の”反論”は、次のようなものです。

心理学者Y:性格に差があるように見えるのは、多くの人がそう思い込んでいるからだ 心理学者Z:その証拠に、正統的な心理学の性格テストでは、血液型による差はなかった

このタイプの心理学者の代表例として、信州大学・菊池聡氏のかつての言説を紹介します。

「A型なのに、ぜんぜん凡帳面じゃない人はいっぱいいる」というように、血液型性格学に対する反証例を挙げる批判法。これも「身の回りの人が当てはまるから信じる」というのと同じ誤った考え方である。血液型学に限らず、おおよそすべての性格理論は統計的なものであって、集団全体の傾向としてしかとらえられない。 (中略) いずれにせよ、血液型性格判断はなぜ虚偽なのか、これは提唱者が言うような性格の差が、現実に信頼できる統計データとして見あたらないという点につきる。

(不可思議現象心理学9 血液型信仰のナゾ-後編 月刊『百科』1998年3月号)

まったくそのとおり! 心理学者の言説は正しいし、だから「血液型と性格は関係ない」、と断言する人も少なくないはず。しかし、この矛盾は誰でも簡単に見破れます。

否定派心理学者の矛盾

ご存じのとおり、「矛盾」という故事成語は、中国の古典『韓非子』にある有名な逸話に由来していますそれは、「どんな盾も突き通す矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた楚の商人が、客から「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と問われ、返答できなかったという笑い話です。

血液型でも同じ。たとえば、A型の典型的な特徴は「几帳面」だとよく言われます。このことは前出の菊池氏も言及しています。

もし、多くの人が「A型は几帳面」と思い込んでいるなら、当然A型の人にそう答える人が多くならないとおかしい。言うまでもなく「几帳面」は性格です。つまり、心理学者Y氏の言うように、多くの人がそう思い込んでいるなら、どんな性格テストでも「A型は几帳面」という結果になるはずです。

この点から見ると、心理学者Y氏の主張と、Z氏や菊池氏の結果は矛盾しているように見えます。本当に、「性格テストでは、血液型による差はなかった」なら、そのテストは”欠陥商品”だとも言われかねません。常識的には…いや、どう考えてもおかしいのです。

このことは、否定派心理学者の急先鋒だったの長谷川芳典氏でさえ同意しています。

質問紙型の性格検査(性格テスト)では、しばしば自己評定型の質問が並べられているため、血液型本やかつての血液型性格判断喧伝番組を繰り返し視ていた人は、質問項目のなかで自分の血液型に合致する行動傾向があるかないかを問われた時に「あてはまる」と答えやすくなる。そういう人たちが調査対象に1割でも含まれていれば、見かけ上、血液型による(統計的に)有意な差が確認される可能性が高い。

実際にも、著名な科学誌である「PLOS ONE」には、日本人は血液型どおり「A型は粘り強い(persistence得点が高い)」結果が得られたという、弘前大学医学部(当時)の土嶺章子氏らによる2015年の論文が掲載されています。

図3出典:PLOS ONE

この論文が注目を浴びている証拠は、現在までの引用回数が27回、閲覧回数は2万回超もあること。論文を書いた人なら分かると思いますが、少なくとも私には垂涎の数値です。