白物家電は、かつては世界市場において日本企業の独壇場だった。しかし、その状況はすっかり変わってしまった。中国の家電メーカーの台頭が著しく、日本メーカーの存在感は薄れている。白物家電だけではない。他の業界でも危機感が高まっているのだ。

白物家電の世界シェア、中国メーカーのハイアールが対応

家庭で使われている白物家電の代表格は、冷蔵庫だろう。ビジネス情報を発信しているユーロモニター・インターナショナルの調査によると、2017年時点の世界シェアトップは中国の「Haier(ハイアール)」で約17.3%だ。

2位は韓国の「LG」(約6.9%)、3位も韓国の「Samsung(サムスン)」(約6.1%)、4位は米国の「Whirlpool(ワールプール)」(約4.6%)、5位は中国の「Midea(美的集団)」(約3.7%)となっている。

この2017年の調査では、ハイアールは洗濯機部門でも首位で、約14.8%のシェアを獲得している。また冷凍庫部門ではシェアが20%台に達しており、他社の追随を許さない状況となっている。

このようなランキングで日本企業の名前をあまり見かけなくなってしまったが、2002年は家電の世界売上高ランキングでソニーとパナソニック(※当時は松下電器)が1位と2位だった。

日本企業が中国メーカーなどにシェアを奪われた理由

日本企業は、なぜ中国メーカーや韓国メーカーにシェアを奪われてしまったのだろうか。

その理由は複数あるが、日本メーカーが高機能化を進める一方で、シェアを伸ばしたハイアールなどは機能を消費者ニーズが高いものに絞って低価格化を進めたことが、要因の一つだろう。

中国や東南アジア、アフリカなどの所得水準は上がりつつあるが、日本に比べるとまだまだ低い。このような市場において、低価格はシェアを拡大する上で武器になる。

長らく日本製品は品質の高さで支持されてきたが、近年はハイアールやLGなどの技術力の向上が著しく、これらのメーカーの製品を消費者が「安かろう悪かろう」と思わなくなっているのだ。

国際マーケットでパナソニックは「プレミアム商品」で勝負

このような状況の中で、現在日本の家電メーカーはシェア奪還に向けてどのようなグローバル戦略を立てているのだろうか。

例えばパナソニックは、日本より先にIoT家電を中国市場で展開しており、プレミアム価格帯の製品にも力を入れている。ターゲットは、中国で増え続けている富裕層だ。

中国は平均的な所得水準は日本より低いが、総資産額が3,000万ドル(約31億円)以上の「超富裕層」の人数はすでに日本よりも多い。富裕層調査会社のWEALTH-Xの2019年版レポートによると、日本の超富裕層は約1万8,000人で、中国は約2万5,000人だ。

東南アジアにおいても富裕層は増えている。富裕層に照準を合わせ、日本企業の技術力を生かした商品を展開すれば、シェアでは中国メーカーなどに敵わなくても、売上を伸ばすことはできると考えているのだろう。

ある有望市場において、将来的に中国に負ける!?

今後市場の拡大が見込まれる先進テクノロジーのある領域においても、日本は中国に負けつつある。AI(人工知能)が実現する「自動運転車」だ。

現在中国では、日本を上回る勢いで各社が自動運転車の公道実証を実施している。百度(Baidu)などの中国のIT大手が技術開発に巨額の投資を行い、実用化に向けた検証を猛スピードで進めているのだ。中国政府もこの動きを強力にサポートしている。

中国企業が日本企業よりも先に、商用化に耐えうる「自動運転タクシー」の開発に成功すれば、当然世界各国での展開も目指すことになるだろう。そうなれば、自動運転車における日本企業の存在感は一気に薄れることになる。

日本でも自動運転タクシーの実証実験の取り組みは行われているが、中国と比べると少ない。トヨタや日産のほか、この領域で続々とベンチャー企業も登場しているが、いずれにしてもうかうかしていられない状況であることは間違いない。

戦略のブラッシュアップを迫られている日本企業

世界の家電市場における日本メーカーの凋落は、揺るぎない事実だ。他の市場においても、中国企業などが台頭している。グローバル展開する日本企業は今、戦略のブラッシュアップを迫られているといえるだろう。

 
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)

国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。  

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