では、金融機関経営者は何をすべきか。金融庁の立場からの優等生的な答えをすれば、金融機関が働く人に対する期待を縮小、もしくは放棄するとき、人は顧客との接点のなかに自分の働く意味を見出そうとする、あるいは金融機関の経営者は、職員を、そのように動機づけなくてはならないということである。そして、実は、これが金融庁の重点施策である顧客本位の業務運営の本質だということなのである。

つまり、人は、自分の提供した金融機能が顧客によって適切に利用され、そこに社会的付加価値が創造されることを通じて、社会における自分の位置を発見し、自分自身が高められたと感じ、働きがいを感じる、これが金融庁のいう顧客との共通価値の創造であって、金融機関と顧客との間の共通価値の創造は、その結果にすぎないのである。

金融に限らず、顧客との共通価値の創造こそ、真に働くことの本質である。ピアニストは自分のために弾き、それが聴衆、即ちピアニストの顧客に感動を与えたとき、そこに共通価値が創造され、職業としてのピアニストが成立する。この原理は、全ての働くことについて共通である。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?