働く人の意思と組織の期待が一致したときに、働く人の生産性が最大化するのだから、生産性改革の最上位の課題として、生きがいと働きがいとの一致という理想の追求があるわけだが、従来は組織の期待の方向から解が模索されたのに対して、これからは働く人の意思の方向から問題への接近がなされるのである。いうまでもなく、それが働く人を主語にしている働き方改革の本質である。
では、どのようにして働く人は働く意味を見出すのか。組織として、人は自分のために働くものであり、組織のために働くものではないという事実を正面から認め、働く人に対する期待を縮小、もしくは放棄するとき、人は自分自身の力で働く意味を見出すと考えるほかない。例えば、金融庁は、職員に国益への貢献を求めているのだが、職員が自分のためにする自主的な活動にも公務としての地位を与え、自分なりの国益への貢献を発見するように職員を促すことにしている。
金融庁は、施策としては、金融機関に対して、顧客の利益のために働くことを求めている。つまり、より具体的には、金融機関の経営者に対する期待として、職員を顧客の利益のために働くように動機付けることが求められているわけである。