次は高齢化で増え続けている社会保障費です。最大の予算項目で、37兆円を計上しています。少子高齢化は世界的な傾向で、中国でも今後、加速し、それに伴い、年金、医療費が増え続ける。社会保障政策の修正を進めないと、国家財政が破綻する。日本の場合、2040年代前半に厚生年金の積立金が枯渇するとの指摘が聞かれます。

日本では「100歳時代」を悪くない夢であるかのように歓迎する風潮がある。「100歳時代」のコストはいかに高くつくかよく計算してみることです。100歳老人で幸せなのは、ごく一部の例外的な人物だけでしょう。

政府は児童手当の拡充、大学授業料の無償化など、口当たりのいい政策を次々に打ち出しています。人口減少で大学の経営が苦しくなり、授業料無償化は人材養成というより、大学救済がもう一つの目的と批判されています。潰れるべき大学は救済より、淘汰されるべきでしょう。

安全保障費も世界的に急増しています。日本は23-27年度の5年間で43兆円の予算を組むことにしており、来年度は7.9兆円です。国防のためと言えば、認められる時代です。米国から調達する兵器、装備品は円安によって、金額が高騰してます。

計画策定時の1㌦=108円が現在では142円に下落し、その分、対米予算は膨張している。安倍元首相が防衛力の増強に執心し、その一方でアベノミクスによって円安を進めました。ちぐはぐなことをやっています。

返還される可能性を熟慮せず、政治的得点になる北方領土交渉のために、プーチン露大統領に接近もしました。交渉の実りは全くなく、安倍氏が親交を結んだというプーチンはウクライナ侵略に走っています。ウクライナ支援のためにカネがかかる。これもちぐはぐ極まりない。

国内問題に戻れば、異次元金融緩和の狙いは円安誘導と財政ファイナンス(国債の大量購入)だったことが今や、定説になっています。赤字財政下の予算編成のために、金融政策を道連れにしたのです。異次元緩和の正常化の段階では、金利が上がり、国債の利払い費が増えます。

国債費は社会保障費に次ぐ規模となり、27兆円が計上されています。そのうち利払い費は1.2兆円増です。金融政策の正常化につれ、利払い費は10兆、20兆円と膨らんでいきます。その段階では、もう国債を簡単には増発できませんから、歳出を切るしかありません。社会保障費も防衛費も簡単には切れない。政府や政治はそうした全体像を考えてほしい。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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