- 労働時間あたりGDPの要因分解
最後に日本の労働時間あたりGDPの要因分解をしてみましょう。
要因分解は、掛け算と割り算で構成される計算式において、その成長率は、各構成要素の寄与度(成長率)の足し合わせとして表現できるものです。
今回の労働者1人あたり成長率は次のように計算されます。
ここで、成長率とは、前年からの伸び率の事を表し、成長率=(当年の数値 – 前年の数値)÷前年の数値x100で計算されます。
労働者1人あたりGDP 成長率 = GDP成長率 – 労働者数成長率 – 平均労働時間成長率
図4が日本の労働生産性についての要因分解です。
GDPが増えるとプラス寄与、労働者数が増えるとマイナス寄与、平均労働時間が増えるとマイナス寄与となります。
各年でどのように経済活動が変化し、労働生産性への影響を与えているかが良くわかりますね。
1992年までは、GDPが成長し、労働者数が増え、平均労働時間が減少していて、労働生産性がプラス成長でした。
1993年にGDPがほぼ伸びなかった中で、平均労働時間が大幅に減少して、労働生産性が上がっています。
その後も、GDPや労働者数がプラスになったり、マイナスになったりしています。
1970年代の大幅な成長率にも驚きですが、1990年代以降の低成長ぶりも良くわかります。
4.日本の労働生産性の特徴今回は、労働生産性と言われる労働者1人あたりGDPや、労働時間あたりGDPについてご紹介しました。
日本は生産性が低いと言われますが、労働時間あたりGDPは上昇傾向ではあります。
労働時間の短縮と、労働者の構成の変化、GDPそのものが増えていない事などが関係しあっている事も良くわかりました。
また、同時に比較的生産性の高い工業の労働者が減り、保健分野や業務支援的な産業の労働者が増えているという産業間の変化も進んでいますね。
今回ご紹介した指標は、一定期間で稼ぐ付加価値を表したものなので、付加価値労働生産性とも呼ばれるようです。
労働生産性には、物的労働生産性という指標もあります。
一定期間でどれくらいの数量の生産ができたかを表す指標となります。
経済指標としては、実質値や購買力平価換算値がこれに相当します。
実質値については、次回以降ご紹介します。
また、労働生産性は、基本的に事後的に計算される指標と言えますね。
労働者を増やせば、その投入した生産性の分だけ付加価値が増えるといった想像をする人も多いようです。確かに、需要よりも供給が少ない場面では、そのような計算も成り立つかもしれません。
実際に事業をしているとわかりますが、需要が伸びない中で、優秀な労働者を増やしたところで売上は増えません。
むしろ、一定の売上をより多くの人で分配する結果になります。
このような事が、おそらく1990年代から2010年頃まで日本全体で続いてきたように見受けられます。
その分、労働時間の短いパートタイム労働者を増やして、一定の仕事をより多くの人でシェアする方向性となっているのかもしれませんね。
図4を見ると平均労働時間が短くなったり、労働者が増える年が多い事がわかります。
今後、人手不足が深刻化すると言われる中で、この傾向がどのように変化していくのか大変興味深いところです。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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