maselkoo99/iStock

  1. OECDにおける労働生産性

    前回までは産業別の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)についてご紹介してきました。日本はどの産業でも既に先進国で低い水準となっているようです。

    賃金は付加価値の分配面の一部です。

    労働生産性は、一定期間で稼ぎ出す付加価値ですので、賃金と労働生産性は密接な関係がありますね。

    OECDでは、労働生産性(Labor Productivity)に関するデータが公開されています。

    労働者1人あたりGDP(GDP per person employed)と、労働時間あたりGDP(GDP per hour worked)です。

    労働者1人あたりや、1時間あたりの労働時間でどれだけの付加価値(GDP)を稼いだかという効率を表す指標となります。

    具体的な計算としては、付加価値の総額であるGDPを、労働者数、又は総労働時間で割った数値です。

    総労働時間は労働者数×平均労働時間となります。

    労働者数(Total Employment)は、企業に雇用されている雇用者(Employees)と、個人事業主(Self-employed)の人数を合計したもので、日本の統計での就業者数に相当するようです。

    労働者1人あたりGDP = GDP ÷ 労働者数

    労働時間あたりGDP = GDP ÷ 総労働時間 = GDP ÷ 労働者数 ÷ 平均労働時間

    まずは、労働者1人あたりGDPから眺めてみましょう。

    図1 労働者1人あたりGDP 名目 日本OECD統計データより

    図1が日本の労働者1人あたりGDPです。

    これまで見てきたGDPの推移と同じように、1990年から成長が緩やかになり、1997年あたりから横ばい傾向が続いています。

    1人あたり800万円前後で長期間継続している事になりますね。

    次に、労働時間あたりGDPについても見てみましょう。

    図2 労働時間あたりGDP 名目 日本OECD統計データより

    図2が日本の労働時間あたりGDPの推移です。

    労働者1人あたりGDPと比べると、上昇傾向が強いように見えます。

    バブル期に急激に上昇し、バブル崩壊と共に成長が緩やかとなり、2004年頃をピークにしていったん減少しますが、2012年頃から再び上昇傾向となっています。

    2022年には5,000円/時間を上回る水準に達していますね。

    平均時給はやっと1997年のピークを超えるかどうかという水準でしたが、労働生産性の方が上昇具合が大きいようです。

  2. 労働生産性の構成要素

    次に、日本の労働時間あたりGDPを構成している、GDP、労働者数、平均労働時間の推移を確認してみましょう。

    図3 GDP・労働者数・平均労働時間OECD統計データより

    図3が日本のGDP(青)、労働者数(赤)、平均労働時間(緑)の推移です。GDPと労働者数は左軸、平均労働時間は右軸となります。

    GDPはこれまでもご紹介してきた通り、1990年から成長が緩やかとなり、1997年をピークにして停滞傾向が続いています。

    労働者数(就業者数)も同様に1997年をピークにして横ばいですね。

    企業の労働者は増えているのですが、個人事業主が減っている事で横ばい傾向となります。

    平均労働時間は緩やかに減少傾向です。

    男性の現役世代労働者は1997年をピークに減少傾向で、代わりに女性や高齢労働者が増えています。 比較的労働時間の長い男性現役世代の割合が減っている事で、平均労働時間も減少傾向が続いているようです。

    また、男性現役世代も含めて、パートタイム労働者が増えている事も影響していそうですね。

    労働者数は横ばいを保ちつつも、平均労働時間が減少しているのはこういった労働者の構成の変化も伴っているようです。(参考記事: 日本の労働者数の変化、参考記事: パートタイムばかり増える日本)