その背景の一つは安全ではないかと思うのです。私の経営するシェアハウスはビルなので構造的にも侵入者を防ぐ意味でも同居人がいる点でも安心です。一方、外国人向けのサービスアパートメントは木造2階建ての一般住宅をその用途に全面的に作り替えたものですが、外国人に圧倒的人気です。理由はシェアではできないプライバシーが保てるからです。
ただ、一部の1階の住民からは安全対策を非常に気にされて窓に鉄格子を付けてくれといわれ設置したこともありました。それでも木造造りが外国人受けがよいのは木のぬくもりなのだと思います。設計的にも日本の古家的なイメージを醸し出す造りにしてあるのでこちらは外国人の長期滞在者ばかりになっています。
住宅事業に携わる者として経済的観点から見た場合、どちらが良いのか、といえばこれははっきり戸建てになります。まず1億円のマンションの半分以上は自分が占有するコンクリート箱以外の部分のコストだということです。
想像してみてください。四角いコンクリートの箱に窓と扉を付けて床材を張り、壁を作り、仕上げをする、それだけならかかるお金は知れているのです。その箱を積み木のように積み上げる、生活するためにエレベーターと階段を付ける、立派なロビーを造り、共同生活としての仕組みや法令に沿った基準を満たす、これに多くの費用が掛かっているのです。
マンションの土地の持ち分は極めて小さいし、自分の所有分は比率表示なのでどれが自分の土地という特定はできません。ということはマンションはコンクリートの塊としての価値が主体であり、当然減価するのです。
またその価値を維持するために管理費と修繕積立金を払います。日本はまだそれでも3万円程度でしょうか?カナダは高くて私の小さな部屋でも管理費だけで月に12万円払っています。修繕積立金の概念はないので壊れた時にどんと大きな請求が来ますが、基本的には予防的管理をしているのでその頻度は少ないと思います。
人生のお付き合いという意味で住宅は大きな意味を持ちます。その中で生活習慣の変化に伴う住宅の改造改築の自由度があり、地べたに近い戸建ては味があると思います。また私は人口密度という考え方も取り込んでいます。巨大なマンション群があるところは避けたいのです。似たような生活をするお宅が窓の向こう側に見えるのは金太郎飴のようで嫌なのです。週末のレストランやスーパーは劇混みなのも生活パタンが皆似ているからでしょう。これは落ち着かないのです。
私は住宅選びはその方の哲学をまず考えるべきだと思います。不動産会社の「人気の街ランキング」などで選ぶのではなく、いろいろな街を歩き、人々に触れ、街のにおいを嗅ぐことです。池袋と吉祥寺は違う匂いです。銀座と新宿も全く違います。住宅街にも当然、匂いはあるのです。まずはその感性を感じることからスタートしたらよいかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月27日の記事より転載させていただきました。
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