ちなみに、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、「クラスター弾はロシア軍もウクライナ軍も使用してきた。違いはロシア軍は侵略のためにそれを利用し、ウクライナ軍は主権を守るために使ってきた点だ」と説明している。いずれにしても、クラスター弾でウクライナの土壌は既に汚染されている。
地元メディアの報道によると、オデッサ市の港で1日、ロケット弾の着弾により大規模な火災が発生した。報道の一つによると、運送会社ノワ・ポシュタの倉庫が被害を受けたという。これまでのところ、少なくとも13人が負傷している。ノワ・ポシュタは、同社の選別センターの1つに弾道ミサイルが着弾したと発表した。従業員に怪我はなかった。
オデッサ市がロシア軍の攻撃ターゲットとなってきた。オデッサはウクライナ第3番目の都市であり、戦争勃発前までの人口は100万人。同国最大の湾岸を有し、穀物の主要輸出港だ。また同国を代表する工業都市であると共に、リゾート地、文学都市としても知られている。「黒海の真珠」とも呼ばれてきた。
ちなみに、オデッサ市には、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)前は米ニューヨーク、ポーランドのワルシャワに次いで世界3番目に大きいユダヤ人コミュニティーがあった。同市だけで当時、40以上のシナゴーグがあったという(「オデッサのユダヤ人たちの『話』」2022年3月15日参考)。
ところで、米国務省は1日(現地時間)、ロシアがウクライナで化学兵器を使用したと非難した。それによると、ロシアは化学兵器禁止条約に違反してウクライナ戦争で刺激性ガスCSを使用したという。ロシアは軍事用化学兵器をもはや保有していないと宣言してきた。
ロシア軍は米国のウクライナへの軍事支援が届く前に、ウクライナへ大攻勢をかけてきている。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、「ウクライナが米国の支援が前線に到着するのを待っている間、ロシアは今後数週間で明らかな戦術的利益を得るだろう」と分析している。ロシア国防省は先月28日、ドネツク地域の小さな町、ノヴォバフムティウカを占領したという。
戦争が長期化し、兵力の消耗が激しくなると、戦場にクラスター弾や化学兵器など非人道的な武器が投入されるケースが出てくる。2011年から始まったシリア内戦ではロシア軍はアレッポを兵器の実験場としてさまざまな武器を投入した。その結果、シリア第2の都市で世界最古の都市の一つだったアレッポは完全に破壊された。ロシア軍は今、黒海の真珠のオデッサを第2のマリウポリ市(ウクライナ南部)のように破壊するために攻勢をかけてきている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?