例えば、飼い主がリラックスすると犬もリラックスしやすくなる、または飼い主が緊張していると犬も影響を受ける、といった現象です。
この現象は、親子や恋人同士の間でも確認されており、強い絆がある関係で特に顕著に表れると言われています。
さらに、飼い主と犬の関係性が共調整に重要な役割を果たしていることも明らかになりました。
犬を家族の一員として愛し、日常的に多くの時間を共に過ごす飼い主ほど、HRVの相関が強い傾向がありました。
これは、犬が飼い主を安心できる存在として認識している可能性を示しています。
また、飼い主の性格や感情が犬の生理的状態に与える影響も確認されました。
不安やストレスを感じやすい性格の飼い主の犬は、高いHRVを示す傾向がありました。
これは、不安傾向のある飼い主が犬に対して、頻繁に安心感を与える行動を取る傾向があるためかもしれません。
例えば、頻繁な愛情表現や細やかなケアが犬をリラックスさせる要因となっている可能性が考えられます。
犬と飼い主の感情的なつながりや絆には、HRVや共調整に加えて、ホルモン分泌も関与しているかもしれません。
他の研究では飼い主と犬が見つめ合うことで、双方の体内でオキシトシンが分泌されることが知られています。(Nagasawa et al., 2015)
オキシトシンは「絆ホルモン」とも呼ばれ、親子間の愛着形成や信頼感を育む重要な役割を果たします。
このホルモンの分泌は、犬と飼い主の絆を深め、感情的なつながりを強化する要因となっている可能性があります。
こうした生理的な反応が、犬と飼い主の関係を特別なものにしていると考えられます。
これらの結果は、親子間の愛着形成にも見られる「生理的シンクロ」に近いものです。
同じように、親子の関係でも生理的なつながりが感情的な絆を深める仕組みがあります。