リスク管理の対象となるリスクは、意図しないリスクだから、当然に最小化されるべきもので、望ましくはゼロにされるべきものである。しかし、リスクを最小化する努力は必ずコストを発生させ、また、いかに努力を徹底したとしても、リスクは完全にはゼロにならないから、残余リスクは自己資本の充実によって吸収させるほかなく、そこに資本コストを発生させる。
そこで、リスク管理という機能は、リスク削減とコスト削減との相反しがちな関係について最適な状態を維持し、また残余リスクに対して適切な資本配賦を行うものとして、経営上の重要な役割を演じているのである。
しかし、ある事業のリスクテイクをすることは、その事業を営むことと同義だから、そこにリスク管理が働くはずもない。本源的リスクについては、テイクするか、テイクしないかの両極の決断しかなく、リスクテイクしない決断をするときは、そもそも起業しないか、廃業するか、事業構造を変えるかしかないのである。
いうまでもなく、リスクテイクには、そのリスクを吸収できるだけの資本の厚みが不可欠であって、逆にいえば、資本とは本源的リスクと残余の付随リスクを吸収するものとして必要額が算定されるものであり、その必要額に対して要求される期待資本利潤を達成できなくなったとき、リスクテイクは放棄されるほかないということである。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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