日本のジャーナリスト「事実をありのまま伝える」より「政治監視」が重要

サンプルサイズと特徴について。本調査では日本のジャーナリストは25,200人と推定されており、この中で回答したのは747人で、51.1%が新聞社、46.7%がテレビ局、1.7%がそれ以外で働いている者らでした。

「とても重要・重要」を選んだ割合についての主な結果は以下です。

「政治リーダーを監視する」⇒90.8% 「時事問題の分析を提供する」⇒84.7% 「人々の政治的意思決定に必要な情報を提供する」⇒83.0% 「事実をありのまま伝える」⇒65.1%

この結果について、米英仏独中との比較をした人が居り、それにより知るところとなった人も多いです。

日本と同様に「政治監視」が重要な国々でも「事実をありのまま伝える」が重視

他の国を見渡してみても、日本は「政治監視」が最も重視されている項目になっている数少ない国で、しかも90.8%という驚異的な数字となっています。

他の国のほとんどは「事実をありのままに伝えること」が最も上位に来ています。

他方で、日本のように「政治監視」が「事実をありのまま伝える」よりも重要な国々はいくつかありましたが、両者の数値は拮抗しています。

シンガポール:「政治監視」50.6 %でトップ、「事実をありのまま伝える」49.5% 香港:「政治監視」80.0% でトップ、「事実をありのまま伝える」79.8%

「事実をありのまま伝える」が最上位に来ていない国として他にエチオピア、オマーン、カタール、UAE、などがあります。

ただ、例えばエチオピアでは「国の発展を支援する」が最も上位の86.7%で、「政治監視」66.4%ですが、その上に「事実をありのまま伝える」が来ているなど、それでも政治監視が圧倒的上位というわけではありません。

これらの国と比較してみても、やはり日本のジャーナリストの回答状況は特異なものとなっていると言えます。

なお、毎年公表されている国境なき記者団の報道の自由度ランキングを重視して報じる日本のメディアの問題点を以下で論じています。

だから日本のジャーナリストは事実を軽視しているのだろうか?

もちろんこの調査結果をもって「だから日本のジャーナリストは事実を軽視している」という結論を導けるかというと留保が必要なのは言うまでもありません。

【「当然のこと」なのでいまさら重要視はしない、それ以外の要素について特に意識を割くべきで、仕事をする上ではそうした意識配分の方が現在の状況では大切だ。】

【事実をありのまま伝えることのみでは逆に読者にとっては異なる事実認識となることが避けられないことが多々あるので適宜解説と背景説明が必要だ】

などといった考え方が広まっている、という可能性はあるのでしょうか?

或いは事実報道を担当している記者の割合と、分析記事を担当している記者の割合が、日本の場合は(特に、当該調査の対象者となった者は)後者の方が多い、という背景があるのでしょうか?

と、SNSではセンセーショナルな取り上げ方がされているとしても、こういう分析の仕方は可能です。

ただ、その可能性は低いんじゃないか?と思わざるを得ない報道や、現実には事実を伝えるだけで読者を騙そうとしている=一定の認識に向かわせる報道が行われているのが実態です。