閑職で働く辛さ

月曜日の朝出社しても、金曜日まで何もやることがない。これは経験したものでなければ、決して理解できない辛さがある。ヒゲを剃ってスーツを着て戦闘モードに入っているのに、何もやることがないのである。

朝9時から18時まで机の上で座っていなければいけない。エクセルを開いたり閉じたり、仕事をしているふりだけはする。周囲はそれが演技だとバレているとわかっていても何もしないわけにはいかない。でもやることはない。これは少しばかり行動の自由度が高いだけで、実質的な刑務所生活に近い。自分の場合は安月給でがむしゃらに働いていた時の方が遥かにマシだった。

閑職の場合は部署全体がヒマで自分だけではないのでまだマシだが、窓際族のおじさんはさらに苦しい。周囲は忙しく動き回ってテキパキ仕事をしている。体は疲れるが、やりがいを持って心の充足感がある。同僚や取引先に「ありがとう」と感謝されて、役に立っている実感がある。でも自分はその光景を見ているだけ。永遠に誰からも必要とされない実感だけを強く感じることになる。

人間は社会的な動物であり、承認欲求の呪縛からの恒久的開放は難しい。最も健全に承認欲求を消化する手段は仕事に他ならない。すなわち「ありがとう」と感謝され、自分が社会の役に立っている実感こそが一番いい薬になる。だが、自分はその手段を絶対に取ることができない。世の中にこれほど苦しいものなど他にあるだろうか。

だから窓際族を長年続けられる人をみて、自分は彼らがある種の高みに至ったと考えている。普通の人間には耐えられない精神を持っているか、人為的に心の痛覚を取り除く方向で進化したとしか考えられない。

こうした前提があるので「窓際族って楽でいいなあ。自分もなりたいなあ」などとは考えないほうがいい。普通に一生懸命働いて、社会の役に立つ実感を得る仕事で頑張るほうが遥かに精神衛生上健全だろう。

 

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