麻生氏はトランプ氏にどう説明したのでしょうか。日鉄の経営陣は昨年末、USスチールの買収を発表しました。政治問題化しやすいこの時期をなんでまた選んだ政治的鈍感さには驚かされます。
日経新聞は「日米鉄鋼再編を政治化するな」(社説、3月)を書き、「政治が正当な理由もなく民間企業の経営に介入してはならない」と主張しました。今は、経済の政治化、政治経済化が進んでいる時代です。「経済が政治化しやすい大統領選直前のタイミングをなぜ選んだのか」と逆の主張をすべき時なのです。買収が失敗したら日鉄社長は辞任ものです。
IMF(国際通貨基金)は、「インドの名目GDPは2025年に4兆3400億㌦となり、4兆3100億㌦の日本を抜き、世界4位に浮上する」と、発表しました。急速な円安で日本は23年にドイツに抜かれ、25年にインドに抜かれ、5位に後退する。
アベノミクスの中核であった異次元金融緩和・財政拡張策の大きな狙いは円安誘導にあったと今や、見抜かれています。それにもかかわらず、アベノミクス批判に尻込みするエコノミスト、政治家が少なくない。「デフレ脱却」の看板を掲げて、招いたものは「国際的地位の下落」でした。
岸田首相は政権発足時に、アベノミクス批判の高まりを見越して、「新しい資本主義」というスローガンを持ち出しました。成果らしい成果を生まないまま、民間識者らによる「人口戦略会議」(議長=三村明夫・日鉄名誉会長)は25日「全国の4割以上に当たる744自治体が若年女性の大幅な減少に伴って、将来的に消滅する可能性がある」との報告書を公表しました。
アベノミクスにせよ、新しい資本主義にせよ、政治は国の基本的な骨格作りに成功していません。「日米同盟の再確認」にトランプ氏を訪問した麻生氏は「円安は大惨事」、「USスチール買収は阻止」に対してどのような構想もって臨むのでしょうか。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年4月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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