当然ながら、継続する意味がないプロジェクトでも打ち切れないものが増えていけば、新しいことに予算を割くことができなくなり、先細りになる。それが、日本が停滞する根源となっている。経済が右肩上がりであれば、新しいプロジェクトを展開する財政的余裕が残っているが、経済が行き詰まると、消化しにくい食物が腸に詰まってくるので、栄養価の高い食事が摂取できず、やせ衰えていくのと同じで、日本の科学は衰退の一途を辿っている。

まったく将来の見通しが立っていないものでも、研究者が嘘とごまかしを続けて膨大な無駄を続けているものも少なくない。研究者と、先輩の失敗をかばう後輩役人たちの馴れ合いがこの国を蝕んで根底を揺るがしている。

政治が強くなりすぎて、官僚人事権を握ったのがそもそもの間違いだ。戦後日本の復興をけん引してきたのは、志と能力の高い官僚が政治と戦ってきた、あるいは、政治を動かしてきたからだ。

しかし、今の官僚を20〜30年前の官僚を比較すると、今の官僚の多くは勉強をしないし、現場を知らない。机に座って、パソコンを操作して、施策を作り上げるものだから、世間の実態との乖離が大きくなり、それを繕うためにさらに悪手を打つ。患者さんの顔も見ずに、パソコンとキーボードに目を落として診療をしている医師と同じだ。お腹を触ることなく、CTの写真で、患者さんの腹水に気づく医師と同じようなものだ。

国を思う政治家と官僚が、革命を起こすくらいの気持ちで日本を立て直してほしいと心から願うばかりだ。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年4月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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