九州新幹線の並行在来線会社(肥薩おれんじ鉄道)は、旅客列車は全てディーゼルカーなのに貨物列車のために電化設備を維持させている。ちなみに貨物列車が走っていなかった西九州新幹線の並行在来線区間では、電化設備が撤去されている。

そして今の枠組みでは、並行在来線会社の経営を助けるために「貨物調整金制度」という補助金が使われる制度を通して使用料が支払われている。実際に収入の過半を貨物調整金が占めている第3セクター会社も多い。

貨物列車の存続握る並行在来線が抱える財源問題

そもそも地域鉄道で必要とされていない過剰な設備の維持を地元自治体に求めて、貨物輸送に対する助成金で地域鉄道を維持するという枠組み自体が本末転倒なのではないかと筆者は考える。

貨物鉄道ネットワークは全国スケールで考えることであって、その一部区間の運営を地元自治体に委ねるというのは、枠組みとしておかしい。トラック輸送に関する2024年問題もふまえ、広域輸送を担う貨物鉄道路線は国が維持し、地域輸送は地元自治体が運営する第3セクター企業が線路会社(国)に使用料を支払うという形にする方が筋が通っていると私は考える。いわば「国道」のようなものだ。

青森県の第3セクター企業は、現在でも旅客列車運営に特化し、線路使用料を線路保有者である県に支払う上下分離方式を採用している。

青い森鉄道が示すローカル線「上下分離」の光と影

国の物流という観点から見て本来正しい方向は、線路を地元の県が保有するのではなく国が保有し、旅客鉄道会社とJR貨物は国に対し線路使用料を支払う、というものではないだろうか。

貨物調整金の制度については、現行の枠組みが2030年度までで、2031年度以降については現在検討中である。物流2024年問題と合わせて道路財源から一部鉄道維持費用を転用するなど、全く別の考え方を検討する世論を醸成するべきだと筆者は考える。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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