1回に取り組む作業時間は30分に制限しよう。科学的には個人差はあるものの、人が「ダレ」や「飽き」を起こさずに集中力を維持できるのは一般的に30分が限界だからだ。原稿の例で言えば、毎日2時間の執筆より30分の執筆のほうが1冊の本を仕上げる総時間は短く済む。

ただ、ここで思うだろう。「時間は減っても、その分費やす日数は増えるじゃないか」と。毎日2時間書けば4か月で仕上げられる原稿でも、毎日30分となれば半年かかる計算になる。そうなると締め切りまでに書き上げることができなくなる、と。

結論から言えば全く問題ない。考えてみてほしい。毎日たった30分と思うかもしれない。でも月に20営業日働くとしたら、総時間は10時間に及ぶ。しかもこの10時間はただの10時間じゃない。高い集中力が維持された、質の高い10時間だ。

圧縮効果を思い出してほしい。今君が15時間かかっている仕事も、質が高いこの10時間なら終わらせられる可能性は高い。作業時間15時間を見すえた仕事の場合、締め切りが1か月先なら毎日30分だけ取り組んでも問題なく期限までに仕事は終えられるというわけだ。

「あえて1日30分しかやらない」

締め切りの心配をしなくてもいい理由は、もうひとつある。それは毎日30分だけ取り組むことで生まれる圧縮効果により、君が今抱えている仕事を終わらせるための総時間は圧倒的に減るからだ。今まで10時間かかっていた仕事も7時間で、3時間かかっていた仕事も2時間で終わり、どんどん仕事が片付いていく。

そのうち君は、私のように毎日鼻歌を歌いながら仕事をこなせるようになるだろう。時間的にも精神的にも余裕が生まれ、どんな事態にも対処できるようになる。毎日30分ずつ仕事に取り組んでいて、万が一締め切りに間に合いそうもない事態になったとしても。それこそ余裕をフル活用して一気に仕上げてしまえばいいのだ。

私は7年以上この「30分仕事術」を実践してきているが、締め切りに間に合わなくなり泣きそうになった経験は一度もない。それは私が無理な締め切りは基本的に引き受けないことと、圧縮効果により圧倒的なスピードで仕事をこなせていることが大きい。

「お前の会社がヌルいから、できることだろ」と考える人もいるかもしれない。その気持ちはよくわかる。ただ少なくとも私の同僚は毎日かなりストイックに働いている。彼・彼女らは少なくとも私のようには感じていないはずだ。それだけは言っておこう。

滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年12月27日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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