ニールの手法が秀逸なのは「書かなくてもいい」と自分に言い聞かせることによって「この仕事は怖くない」と衝動の脳をダマしている点だ。そうして彼は2つの脳の対立をなくし、文章を書き続けることに成功しているというわけだ。

ニールのこの手法は我々ビジネスパーソンも活用できる。たとえば仕事に取り組むときに「この仕事をしなくてもいい。でもこの仕事以外、何もしてはいけない」というルールを作ればいいのだ。これによって仕事に着手できる確率は間違いなく上がる。だがもっといいニュースがある。私はこのルールをさらにシンプルにした。それは「(仕事に)ただ時間をかければいい」というものだ。

効率重視と言われる現代になんと逆行したルールか!と思ったかもしれない。違うんだ。どういうことか説明しよう。

30分時間をかけるだけで仕事は進む

私はYahoo! ニュースに記事を掲載しているが、原稿を書くときはひとつの記事に20時間かけることも珍しくない。気が乗らないときなどは「これから20時間かけて文章を書くのか‥」と思うと心が折れそうになる。そんなときは「ひとまず30分、時間をかけよう」と自分に言い聞かせるようにしている。

ニールのルール同様、何もせずにぼーっとしててもOKだ。文字通り30分間、ただ執筆のために時間を使えばいいことにする。もちろん、スマホをいじるのも音楽を聴くのも本を読むのもNG。そうするとやがて暇に耐えられなくなる。気がつけば執筆に着手して、そのまま30分経つまで苦なく文章を書き続けることができる。

この手法は執筆以外のどんな仕事にも有効だ。ぜひ試してみてほしい。私は気が乗らないとき、とにかく30分だけ時間をかけることを意識する。このルールを使えばどんな仕事にも確実に着手できる。このことに気がついてから、私は思い通り仕事に着手できるようになった。

『トム・ソーヤーの冒険』でおなじみのアメリカの作家マーク・トウェインも「成功する秘訣は着手することだ。着手する秘訣は、気が萎えるような複雑な仕事を、扱いやすい小さな仕事に分割してから、最初のひとつをはじめることである」と言ったとされる。

だがトウェインが言う「最初のひとつ」をはじめることでさえ、ときには難しい。わかる! 本当にわかる。そんなときは取り組む時間を決めて、ただ時間をかければいい。このことを意識するだけで、君は驚くほど簡単に仕事に着手できるようになるだろう。

滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年12月26日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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