参考までに、ナチス・ドイツ政権時代、ヒトラーは12月8日の「聖母マリアの無原罪のみ宿り」の祝日を廃止した。「聖母マリアの祝日を休日とせずに、国民はもっと働くべきだ」というのがその理由だった。
多くのカトリック信者はカトリック教会の教義にあまり関心がない。教義について、ああだこうだという人は聖職者か神学者、それに数少ないが聖書を通じて真理を探究する人々だけだろう。教会の礼拝に規則正しく参加する敬虔な信者は教義には関心を示さない一方、教会主催の慈善活動やコンサートなどイベントには小まめに参加する。教会は社交の場となっているのだ。
当方が初めてオーストリア入りした1980年代初頭、カトリック信者数は同国人口の80%をはるかに超えていた。それがグロア枢機卿の教え子への性的虐待が発覚して以来、教会に背を向ける信者が年々増加し、今や人口の50%を辛うじて維持しているだけだ。人口の過半数を割るのはもはや時間の問題と見られている。
12月8日の「聖母マリアの無原罪のみ宿り」の祝日に、教会ではミサなどが挙行されるが、信者を含め多くの国民はクリスマス用のプレゼント買いに奔走する。そして信者を含め大多数の国民は8日の「聖母マリア無原罪のみ宿り」がどのような意味を持っているかを深く考えることはない。12月8日は国民の休日であり続けるだろうが、カトリック教会の祝日としては既に意味を失っている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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