そして、そううると、このグラフの左端から右端までのすべての出生数を足し合わせた数(=積分値)が2120年の総人口となり、それは果たして4900万人となった。この間に生まれる子どもが全員100歳まで生き、それ以前に生まれた子供は100歳までに死に絶えているとの仮定による予測である。

出所:大西「政府予測より1000万人減! 100年後の日本人口は今の3分の1になる」現代ビジネス +αオンライン | 講談社。ただし、2021-22年は実績値。

ただし、もちろん「全員が100歳まで生きる」というのはあまりに非現実的なので、この研究所が予測する2070年時点の平均寿命まで、と仮定を緩めることもできる。そして、むそれは男女平均で89歳とされているから、ここでは簡単に全員が89歳まで生き、そこで死ぬと仮定しよう。そうすると2120年の総人口は3900万人であることになる注9)。

したがって、将来の日本人口は政府機関が発表するものよりずっと深刻なものとなっている。言い換えると、「少子化を前提にして論ずる」ことを許さないほど深刻であり、抜本的な社会変革がどうしても必要だということである。ここでの議論を緊張感あるものとするために書かせていただいた。

なお、これらの計算は大西「政府予測より1000万人減! 100年後の日本人口は今の3分の1になる」でより詳しく示している。ご関心の方は参照されたい。

(その②に続く)

注1)【社会学の観点】「少子化論」に対する「数理マルクス経済学」の限界①

注2)【経済学の観点】「少子化論」に対する「数理マルクス経済学」の限界②

注3)SocialismとはSocialized Societyのことである、CommunismとはEqualized Societyのことであるとの趣旨からの定義である。人口減との関係で言えば、「子育てのコスト」が個人の負担とならないように内部化(社会化)することと、現在のように貧困な非正規労働者の多くが結婚できないような状況をなくすこと(平等化)を意味している。

注4)人口減少をめぐる社会学的想像力(前編)

注5)【経済学の観点】「少子化論」に対する「数理マルクス経済学」の限界②

注6)【社会学の観点】「少子化論」に対する「数理マルクス経済学」の限界①

注7)イスラエルだけが他と異なる理由には、イスラエルがその内部に合計特殊出生率が6を超える特殊な社会階層を持っているということがある。「超正統派」と言われるいわば「宗教右翼」がそれで、彼らは就職もせず、かつ兵役も免除されている。建国以来一貫して戦争状態を続けてきた特殊な国家が、人口増を担う特殊な社会階層を内部に維持しているのである。このシステムは「資本主義」ではあっても「先進資本主義」とは言えない。

注8)この部分も過大な予測であるとの根拠も大西「政府予測より1000万人減! 100年後の日本人口は今の3分の1になる」現代ビジネス +αオンライン | 講談社(1/5) (gendai.media)で述べている。関心ある読者は参照されたい。

注9)人口が100年でほぼ1/3になるとの予測はすでに鬼頭宏『2100年、人口3分の1の日本』メディアファクトリー新書、2011年でなされている。さすが歴史人口学だけあって長期を見据えた氏の慧眼が示されている。しかし、それほど、「100年で1/3」という予想は現実的であるのである。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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